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水銀灯とマルチハロゲン灯の違い

水銀灯とマルチハロゲン灯は、発光していない状態だと区別が難しいランプです。
発光させると色味が異なりますので区別が可能です。
水銀灯もマルチハロゲン灯もHIDランプに分類されるのですが、各種特徴や水俣条約の規制対象か否かも異なります。

HIDランプとは

水銀灯とマルチハロゲン灯の紹介をする前に、HIDランプについて紹介します。

HIDはHigh Intensity Dischsrge Lanpの略で、日本語では高輝度放電ランプとなります。
発光原理は蛍光灯と同様で電極から放出される電子が水銀原子と衝突して光を放出します。

以下のような種類のランプが、様々な用途で採用されています。

上記のような種類によって封入ガスや構成材料・発光物質が異なり、これらの違いによって特長にも差があります。
光が強く広範囲を照らせることから天井高5m以上の工場倉庫、体育館など使用されています。

水銀灯とは

工場倉庫、体育館で多く使用されていましたが、水俣条約の対象となったことや省エネ意識の高まりから、高圧水銀ランプはLED無電極ランプなどへの交換が進んでいます

発光管は高温高圧に耐える透明石英ガラスが使わており、アルゴンが封入されています。
演色性がRa40ほどと低く、自然光(Ra100)下と見え方が異なり、光源寿命は12,000時間ほどです。

型番ではHFと表記されていると水銀灯であり、規制対象になっている可能性が高いです。
一度メーカーにお問い合わせされることをおすすめします。

マルチハロゲン灯とは

メタハラことメタルハライドランプに近い照明と言われています。
発光管には金属ハロゲン化物が封入されており、水銀灯よりも約1.5倍発光効率を上げたランプです。その代わりに、水銀灯よりも寿命が短くなります。
セラミックメタルハライドランプと同様に、照射方向によってランプ形状が異なるため、選定時に注意が必要です。

基本的には水銀灯と同じ安定器で使用可能で、水銀灯と比較した際の発光効率演色性(後述)を評価されていました。
しかし高天井設置照明の短寿命はコストが掛かるため、現在は需要低下により、市場流通量は非常に落ちました。尚、水銀灯と異なり、水俣条約の対象外です。

水銀灯とマルチハロゲン灯の違いについて

発光効率

水銀灯とマルチハロゲン灯は、同じ400Wの消費電力でも発光効率が異なります。
水銀灯は400Wで全光束は約22,000lmですが、マルチハロゲン灯は約30,500lmです。つまり、水銀灯の発光効率55lm/Wに対し、マルチハロゲン灯は76lm/Wになります(同照度の無電極ランプは90lm/W)。
前述の通り、マルチハロゲン灯は水銀灯の発光効率を改善させた照明のため、優位性があります。

光束維持率

光束維持率は、新品時からどのくらい明るさを維持しているかを表したものです。

水銀灯は使用後12,000時間ほど経過すると光束維持率は70%を切ります。
一方、マルチハロゲン灯は9,000時間ほど経過すると70%を切りますので水銀灯の方が光束維持率は高いです。

照明は設置後必ず明るさは劣っていきますので、この光束維持率は長ければ長いほど明るさが確保できるということになります。

演色性

照明で照らした物体の色の見え方に及ぶ効果を演色と言い、それを各照明の評価する際には演色性という用語が使われます。Raで表し100に近いほど、演色性が高くなります。

水銀灯はRa40程度に対し、マルチハロゲン灯はRa65~70ほどですので高演色性のランプです(無電極ランプはRa80)。水銀灯の演色性が懸念となる店舗や美術館・博物館では、商品や展示品の色味を高演色で照らすことが可能のため採用されていました。

寿命

水銀灯の定格寿命は12,000時間となります。10時間/日×年間営業日245日間の使用で、約5年間ほど使用できることとなります。

マルチハロゲン灯の定格寿命は、6,000~9,000時間となり、上述の条件下では約2.5~3.5年間ほど使用できることとなります(無電極ランプは100,000時間)。

寿命が長い照明を利用したほうが交換頻度が低く、メンテナンスコストを抑えることが可能です。

色温度

色温度は、照明が発する光の色を表しK(ケルビン)という単位で表されます。
朝日や夕日は2,000Kほど、日中の太陽光は5,000~6,000Kほどで、数値が低い方がよりオレンジに近い暖色系の色、高い方がより白に近い寒色系の色となります。

水銀灯は4,100Kの白に近い光に対し、マルチハロゲン灯は5,000K前後とより、より太陽光に近い身近な色温度となります。

水銀灯とマルチハロゲン灯の見分け方

電球だけ見るとほとんど見た目が変わらないのでお客様の中には見分けがつかないという方もおられます。
次の項目に着目してみてください。

型番を調べる

現在購入している電球の型番や安定器に記載してある型番をご確認ください。
「HF」ではじまっていれば規制対象となる水銀灯、「M」や「(メタハラと同じ)MF」ではじまっていればマルチハロゲン灯になります。
型番をHPで検索すると各種メーカーページにも規制対象か記載されていますのでご確認ください。

写真撮影する

水銀灯は直接見ると白っぽく見えても、カメラを通じて写真など撮ると緑色に写ります。
マルチハロゲン灯は白色で写りますので、写真を撮って緑色であれば水銀灯の可能性が高いです。
しかし水銀灯も白色に写る品番もあるようですので、注意が必要です。

色を確認する

水銀灯とマルチハロゲン灯の違い】でも記載したように、マルチハロゲン灯は水銀灯よりも演色性が高い照明となります。
感覚的なものもあり難しいかもしれませんが、色を太陽光下とランプ光下で見比べてみてください。全く違う見え方(緑がかったように見える)だと水銀灯の可能性が高いです。

水銀灯やマルチハロゲン灯の交換として利用される無電極ランプ

弊社は無電極ランプを扱う会社ですので、水銀灯やマルチハロゲン灯からの交換を提案しております。

無電極ランプとは

無電極ランプも水銀灯やマルチハロゲン灯と同じHIDランプになります。
発光原理は蛍光灯と同様で電極から放出される電子が水銀原子と衝突して光を放出します。
ただしフィラメントのような消耗する備品がないので、非常に長寿命という特徴があります。

ここからは水銀灯とマルチハロゲン灯の違いで記載した発光効率、光束維持率、演色性色温度の項目で無電極ランプについて説明します。

無電極ランプの発光効率

無電極ランプの発光効率は90lm/Wになります。200Wタイプで18,000lmです。
上記の発光効率を確認すると、水銀灯が55lm/W、マルチハロゲン灯は76lm/Wになるのでこの数値だけ確認すると以下となります。

水銀灯<マルチハロゲン灯<無電極ランプ

つまり3種の比較においては、無電極ランプが最も省エネに貢献できる照明と言えます。

無電極ランプの光束維持率

無電極ランプは、光束維持率が非常に良い照明です。
常時点灯し、60,000~100,000時間経過しても 約70%以上の光束量を維持します。

よって、水銀灯とマルチハロゲン灯よりも無電極ランプの方が明るく省エネになります。
明るさが60,000~100,000時間使用してようやく70%ほど落ちますので、導入したての明るさを長く維持できる照明と言えます。

無電極ランプの演色性

無電極ランプの演色性はRa80です。
青・緑・赤できれいな白色を表現しており、色を重要視するような塗装エリアや検査エリアでも採用されています

マルチハロゲン灯は水銀灯よりも発光効率や演色性を改善した照明ではありますが、今や短寿命とも呼べる水銀灯未満の寿命を持つため、新たに採用するメリットは限りなく乏しいかと思われます。

無電極ランプの色温度

無電極ランプの色温度は蛍光塗料によって変更が可能です。
標準は5,000Kで真っ白というよりはアイボリー系の白色で、ご希望に応じて2,700Kほどのオレンジ色に近い電球もご用意が可能です。

まとめ

現地調査させていただいた際、「水銀灯とマルチハロゲン灯を使用している。」であったり「省エネ対策をしたい。」というお話もよくいただいております。
水俣条約の規制対象になるかならないかも大きく違いますし、それぞれのメリットやデメリットがございます。

もし自社の照明が何か分からないであったり、交換に迷われましたら、下記お問い合わせフォームよりご相談ください。

【執筆者:Y.N.(一般社団法人照明学会 照明コンサルタント)】