水銀灯と高圧ナトリウムランプの違い
2021年08月31日
水銀灯とナトリウムランプは発光していない状態だと区別が難しいランプです。
発光させると色味が異なりますので区別が可能です。
水銀灯もナトリウムランプもHIDランプに分類されるのですが、各種特徴や水俣条約の規制対象になるならないも違ってきます。
目次
HIDランプとは
水銀灯とメタルハライドランプの紹介をする前にHIDランプについて紹介します。
HIDはHigh Intensity Dischsrge Lanpの略で日本語では高輝度放電ランプとなります。
発光原理は蛍光灯と同様で電極から放出される電子が水銀原子と衝突して光を放出します。
ランプの種類によって封入ガスや構成材料、発光物質が異なり、この違いによって特長にも差があります。
光が強く広範囲を照らせることから天井高5m以上の工場や倉庫、体育館など使用されています。
このHIDランプは水銀灯、ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、セラミックメタルハライドランプなどと分けられます。
水銀灯とは
工場や倉庫で多く使用されていましたが、
高圧水銀ランプは水俣条約の対象となったことや省エネを求めてLEDや無電極ランプなどへの交換が進んでいます。
発光管は高温高圧に耐える透明石英ガラスが使わておりアルゴンが封入されています。
演色性がRa40ほどと悪く自然光下と見え方が異なり光源寿命は12000時間ほどです。
型番ではHFと表記されていると水銀灯であり、
規制対象になっている可能性が高いため一度メーカーに問合せされたほうが良いです。
ナトリウムランプとは
ナトリウム蒸気中のアーク放電により発光しているランプでナトリウムランプ、ナトリウム灯などと呼ばれています。
この照明にも水銀は含有されていますが水俣条約の規制対象にはなっておらず、生産終了品ではありません。
型番ではNHなどと記載されています。
点灯していないときの見た目は水銀灯やメタルハライドランプと変わりがないのですが、点灯させると違いは一目瞭然です。
ナトリウムランプはオレンジ色に光るのが特徴となっています。
ナトリウムランプには高圧ナトリウムランプと低圧ナトリウムランプの2種類存在します。
低圧ナトリウムランプの見た目は、筒形となっており200W以下のものが多く、
現在は需要数低下により取り扱い終了・生産中止・製造中止となっている品番もあります。
高圧ナトリウムランプの見た目は水銀灯と同様のナス型のものが多く200～1000Wで展開されています。
低圧ナトリウムランプと同様に、生産中止・製造中止が増えており、
パナソニックは、高圧ナトリウム灯などの高輝度放電灯（HIDランプ）の生産を終了しました。
https://news.panasonic.com/jp/press/jn220301-1今回記載するのはこの高圧ナトリウムランプを対象とします。
水銀灯とナトリウムランプの違いについて
発光効率
水銀灯とナトリウムランプ(NH)は同じ400Wの消費電力でも発光効率が異なります。水銀灯は400Wで全光束は22,000lmほどですがNHは47500lmほどです（360Wタイプ）。水銀灯の発光効率は55lm/Wに対し、NHは132lm/Wになります（同照度の無電極ランプは90lm/W）。ナトリウムランプは発光効率が良い照明となっております。では同じくらいのW数の水銀灯とナトリウムランプではナトリウムランプの方が明るいと言いたいところですが、下記記載の色温度が関係しますのでそちらで説明します。
光束維持率
光束維持率は新品時からどのくらい明るさを維持しているかを表したものです。
水銀灯は使用後12000時間ほど経過すると光束維持率は70％を切ります。
ナトリウムランプは24000時間ほど経過すると70％を切りますのでナトリウムランプの方が光束維持率は良いです。
照明は設置後必ず明るさは劣っていきますので、この光束維持率は長ければ長いほど明るさが確保できるということになります。
演色性
照明で照らした物体の色の見え方に及ぶ効果を演色と言い、それを各照明の評価する際には演色性という用語が使われます。
Raで表し100に近いほど演色性が高くなります。
水銀灯はRa40ほどになります。ナトリウムランプはRa85ほどですので高演色性のランプです。
光源寿命
水銀灯の定格寿命は12,000時間となります。24時間365日使用で1.5か月ほど使用できることとなります。
ナトリウムランプの定格寿命は24,000時間となり24時間365日使用で3か月ほど使用できることとなります(無電極ランプは60,000～100,000時間)。
光源寿命が長い照明を利用したほうが交換頻度は少なくできメンテナンスコストを抑えることが可能です。
色温度
色温度は照明が発する光の色を表しK（ケルビン）という単位で表されます。
朝日や夕日は2000Kほど、太陽光は5000～6000Kほどで数値が高い方が白っぽい寒色系の色、
低い方がオレンジっぽい暖色系の色となります。
ナトリウム灯は2500～2800Kでオレンジ色をしています。水銀灯は4100Kほどで白っぽい光です（無電極ランプは5000Kの昼白色)。ナトリウム灯は高効率照明ですが、オレンジ色をしているのであまり明るさを感じにくい照明です。
ただしオレンジ色は霧や煙の中でも認識しやすいため、
トンネルライトとしてもナトリウムランプは以前よく使用されていました（近年はLEDが増加）。
よって、同じW数くらいの水銀灯とナトリウムランプでは、
光束値はナトリウムランプのほうが高くても水銀灯の方が明るく感じるのはこの色温度が影響しています。
水銀灯とナトリウムランプの見分け方
電球だけ見るとほとんど見た目が変わらないのでお客様の中には見分けがつかないという方もおられます。
次の項目に着目してみてください。
型番を調べる
現在購入している電球の型番や安定器に記載してある型番をご確認ください。
HFではじまっていれば規制対象となる水銀灯、NHではじまっていればナトリウムランプになります。
型番をHPで検索すると各種メーカーページにも規制対象か記載されていますのでご確認ください。
色を確認する
点灯していない状態のランプ形状ではあまり区別がつきませんが点灯させると区別可能です。
オレンジ色に光った照明がナトリウムランプになります。
水銀灯やナトリウムランプの交換として利用される無電極ランプ
弊社は無電極ランプを扱う会社になりますので水銀灯やナトリウムランプからの交換を提案しております。
無電極ランプとは
無電極ランプも水銀灯やナトリウムランプと同じHIDランプになります。
発光原理は蛍光灯と同様で電極から放出される電子が水銀原子と衝突して光を放出します。
ただしフィラメントのような消耗する備品がないのでランプが非常に長寿命という特徴があります。
ここからは水銀灯とナトリウムランプの違いで記載した発光効率、光束維持率、演色性、色温度の項目で無電極ランプについて説明します。
無電極ランプの発光効率
無電極ランプの発光効率は90lm/Wになります。200Wタイプで18000lmです。
上記の発光効率を確認すると水銀灯が55lm/W、ナトリウムランプは132lm/Wになるのでこの数値だけ確認すると
水銀灯＜無電極ランプ＜ナトリウムランプ
となります。
ただし色温度の影響で明るさ感は異なってきますので、
高効率のナトリウムランプが照度の数値的には高く出ても人間の感覚として
ナトリウムランプが一番明るいというわけではありません。
無電極ランプの光束維持率
無電極ランプは光束維持率が非常に良い照明です。
無電極ランプは常時点灯し、60,000時間以上経過しても 約70％以上の光束量を維持します。
無電極ランプは6,000時間の使用では数％しか光束は落ちません。
ナトリウムランプを交換検討する際は6,000時間以上使用されていることがほとんどです。
無電極ランプのほうが明るく省エネになり、かつ明るさが6～10万時間使用してようやく70％ほど落ちますので、
導入したての明るさを長く維持できる照明と言えます。
無電極ランプの演色性
無電極ランプの演色性はRa80です。青・緑・赤できれいな白色を表現しており、
色を重要視するような塗装エリアや検査エリアでも採用されています。
ナトリウム灯の演色性はRa85ほどですが、オレンジ色という色温度が影響し色味を重視する場所では使用しづらいです。
無電極ランプの色温度
無電極ランプの色温度は蛍光塗料によって変更が可能です。標準は5000Kで真っ白というよりはアイボリー系の白色です。
ご希望に応じて2800Kほどのオレンジ色っぽい電球もご用意が可能です。
まとめ
現地調査させていただいた際、水銀灯とナトリウムランプを使用している、省エネしたいというお話もよくいただいております。水俣条約の規制対象になるかならないかも大きく違いますし、それぞれのメリットやデメリットがございます。
もし自社の照明が何か分からないであったり、交換に迷われましたらご相談ください。
【執筆者：S.S.（一般社団法人照明学会 照明士）】