樹脂材料について10
2011.04.01
■発行日:2011年4月1日発行 NO.02-32
新シール概論(32)(樹脂材料について)
1.シール用樹脂材料(続き)
3.4)PA樹脂について(続き)
前号で、PA樹脂の調湿について触れておきましたが、追加しておきます。
PA樹脂では、吸水性による原因で、寸法の変化などが起こります。
ご存じのようにPA樹脂の製法には、押出しによるものや、射出成型などがありますが、すべての原材料のビレットなどは当然水分のない絶乾状態です。
もし、水分などがあれば、成形時に欠陥が発生する危険性があります。時々、少しでも水分がある場合には、成形前に乾燥することが必要です。従って、これらの条件で成形された製品は絶乾状態になっています。
製造された製品は、空気中に保管されると漸次、水分を吸収することにより、寸法が変化することになります。これらを是正する手段が調湿処理です。また射出された製品には、熱などによる応力が発生しています。
以上を含めて同時に処理する方法が取られます。(調湿処理や、熱処理などで表現されています。)
実際には、使用される温度条件を配慮してその温度より約10℃高い温度の水や流動パラフィン、シリコーンオイルなどを加熱して液中にPA樹脂製品を浸漬して行います。時間などは、製品の肉厚により異なります。使用温度が70℃以下ならば、沸騰水での処理が最も簡単です。取り出した製品は急冷などせずに徐冷することが肝要です。
以前に寸法が安定せずに困ったことがありましたので、これらの処理は良い結果を導きました。注意すべきなのは、射出成型ではこれらの吸湿による寸法を含めて設定しないと後で困ります。しかし、完全に吸水した状態でも保管方法により、変化が若干起こりますので、保管にも注意が必要です。ただし、調湿した製品は絶乾状態の製品と異なり極端な変動は起こらないことは確かです。
この処理は前に述べましたが、製品の残留応力やひずみを除去できる大きな長所を持っています。樹脂類が往々に損傷する場合には、これら残留応力やひずみが原因になっています。
今月は、PA樹脂における調湿に関して述べました。なお、樹脂の中でもPA樹脂が、一番吸水率が高いためです。他の樹脂類にはない、特別な事項です。
(補足:製品の数量が多い場合の沸騰水処理では、製品を金網などに入れて保護しながら行うと便利です。また他の流体を使用する場合には、局部加熱しないように良く液を攪拌することも重要です。)
(続く)
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