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樹脂材料について12

■発行日:2011年10月1日発行  NO.02-38

新シール概論(38)(樹脂材料について)

1.シール用樹脂材料(続き)

しばらく、特別号で、ゴムの摩耗について述べてきましたが、元の樹脂材料に戻ります。
前回「樹脂材料について11」

 

6)スーパーエンプラについて

6-2)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
融点が334℃で、連続使用温度は250℃であり、耐薬品性、耐摩擦摩耗性、機械加工性等において非常にバランスのとれた熱可塑性スーパーエンジニアリング・プラスチックです。他方、短時間では290℃のスチームにも耐え、放射線にも極めて高い耐性をもつ樹脂です。
シール部材としては、BUR、シールリング、ピストンリングなどのその剛性と耐摩耗性を生かした用途が多いようです。
その中で、オートマチックトランスミッション(以下AT)用シールリングについて、詳しく説明します。このリングは、エンジンの高温・高速化の向上、省エネルギーを目的としたオイルポンプのコンパクト化や軽量化、安定した漏れ量などが厳しい性能が要求されています。


AT用シールリングの絵図(三菱電線工業株式会社時報第102号から)

 

米国のSAE規格で、この樹脂製のリングが規定されています。
SAE J2310「Rectangular Cross Section Polymeric Sealing Rings」(1999年発行) もともと鋳鉄製のピストンリングが使用されていましたが、上記に記載したような理由で発行された規格です。

この規格で記載されています樹脂材料ではPTFE、Polyimide(今後紹介します)、PEEKです。

特性の比較値がありますので、紹介しますと

ASTM
Test #
単位 PTFE Polyimide PEEK
最高温度 288 260 250
熱変形温度(455KPa) D 648 121 NA NA
熱変形温度(1.82KPa) D648 58 360 167
線膨張係数(D696) E228 *1 7.5 2.7-5.5 2.2-
7.4
破断伸び D1708 % 250-
350
2.5-5.5 1.3-
3.5
密度 D792 2.1-
2.3
1.42-1.56 1.44-
1.48
圧縮強さ D695 *2 12-24 220 150
摩擦係数 NA*3 0.05-0.13 0.08-0.12 0.11-
0.16

*1:10E-5/°K
*2:MPa
*3 NAは該当なし

 

上記の特性で耐熱性はあまり各々に遜色はないのですが、熱変形温度ではPTFEに比較して他の樹脂は極めて熱による変形が起こり難いことが言えます。
詳しい内容は次号で。 (続く)

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