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特別号 ゴムの耐薬品性について(3)

■発行日: 2020年4月1日発行  NO.03-74

新シール概論(2)特別号 ゴム耐薬品性について(3)

もう少し、ゴム耐薬品性について、述べていきます。
ゴムが液体と接した場合には、次の変化が常時発生します。

  • (1) ゴムに液体が浸入する
  • (2) 液体がゴムの中の成分を抽出する

この状態は温度が高い程、反応が活発になります。
従って、前に述べましたようにゴムの使用できる最高温度あるいは、液体の最高温度のどちらかで浸せき試験が行われます。
例えば、水・グリコール系作動油では60℃程度が使用限界ですので、いくら高い温度で使用できるゴム材料でもこの液体に制限されることになります。
(1)と(2)の現象は同時進行ですが、(1)の液体の浸入する度合いが高ければ、ゴムは膨潤することになります。
このことは、体積変化率がプラス側になる理由です。
体積変化率があまり大きいと当然、他の特性の変化も大きくなり、一種の弊害になります。
Oリングの使用の場合には、溝と関連で溝断面積とOリングの断面積比率が問題となります。
Oリングは自封性のシールですから圧力の導入が基本ですので、線膨張係数や個々の公差を配慮して空間率は30%程度あるような設計をしています。
従って、液体の影響によるゴムの体積変化率が30%を超えると空間が無くなる可能性があるので、このあたりが限度となる訳です。

実際には、ある文献には、Oリングの片方だけの液体の接触である、かつOリングにつぶし力が働いているので、全面浸せきに対して、約50%程度体積変化率が小さくなっているのが現状であると示している例もあります。
W.Keller氏のデータを下記に示します。

V S 実際の溝内での膨潤%
フリー状態における膨潤% つぶし率 % Real Volume change R
25.5 20 11
12 25 5

ここで、Vのフリー状態とは全面浸せき場合の体積変化率で、SはOリングのつぶし率です。
(ここでは、Oリングのつぶし率を計算にいれているのが、現実性があります)

次に(2)の度合いが高ければ、ゴムの収縮が起こります。
問題は、(2)の収縮です。ゴムの構成している成分が液体により、抽出されることは、基本的には、ゴムの本来の性能を発揮できないことを示すために、出来るだけ、少ない体積変化が望ましいと言えます。
以前に説明したように-5%程度に抑える理由です。
論外ですが、ゴムが液体により、溶解した場合は極端の例ですが、現実には起こります。ゴム糊を作る場合にはそれを利用してゴムを溶解する溶剤など使用して製造します。

(続く)

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