一覧に戻る

特別号 気体とシール(3)

■発行日:2020年7月1日発行  NO.03-77

新シール概論(2)特別号 気体とシール(3)

 

ガス透過について更に追加で説明します。例えば、従来1本のOリングでシールするような場合が圧倒的に多いのですが、これを2本(多重)でシールすれば前号の2)式で示したようにシール幅が2倍になるので、透過量は半分になるはずです。
次に示す文献ではその試験を行い、確認したとの報告があります。
日本原子力研究所 発行のJAERI-Tech 2001-67 「多重Oリング装着によるヘリウムガスの透過漏洩抑制」です。 試験装置を図2図3に示します。

図2 Oリング透過漏洩試験治具
図2 Oリング透過漏洩試験治具

 

図3 ヘリウムのOリング透過漏洩試験要領図
図3 ヘリウムのOリング透過漏洩試験要領図

 

試験の結果、試験当初のOリングを2重にした場合の透過漏洩量の値は1/2であるとの推定については、時間遅れが相当あるものの最終的の値は1/2となることが解明できたと結論を出しています。
この文献はインターネットの検索により、より簡単に入手できますので、興味のある方は一読してください。
しかしながら、ゴム材料の透過係数は一概にこの値ですと言えないことが、前号の表1で分かりますように色々の要因により、変わることを是非理解ください。
変わるよう要因には

  • (1) ガスの種類(分子量の少ないものは、透過し易い、特に二酸化炭素は溶解度が高く、透過が多い)
  • (2) 使用される温度(温度に依存性があり、高温になれば増加し、低温になれば下がる)
  • (3) ゴムの種類(NBRであれば、アクリル量により変わる、また配合内容により変化する)
  • (4) ゴムの硬さ(硬さは高い程、透過係数は下がる傾向です)などがあります。

なお、通常ガス透過の少ないゴムとしては、IIR,FKM,NBR(アクリル量の大きいもの)CRなどが代表的なものです。
なお、VMQはけた外れの透過係数であるので、使用には注意が必要です。

(続く)

お問い合わせフォーム

 

個人情報保護方針