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特別号 気体とシール(4)

■発行日:2020年8月1日発行  NO.03-78

新シール概論(2)特別号 気体とシール(4)

 

今月は気体とシールについては高圧ガスによってはゴムシールに発生するブリスター現象について説明します。
Oリングなどゴムのシール部品は気体のシールの場合以前に説明したように気体は浸透、拡散、透過が連続的に起きます。
透過する気体の量は圧力に比例して大きくなります。高圧の場合は、高圧の気体がゴムの内部に浸透した状態で平衡になります。
この状態で雰囲気の圧力が低下したら、ゴム内部の気体は徐々に抜け出ますが、圧力低下が急速な場合は抜け出る間がなく内部の気体は膨張しようとします。
ゴムの体積が増加(膨張)したり、内部に気泡が発生したりする。(スポンジ状)
さらにひどくなると気泡がパンクし亀裂となり、表面に現れます。
このように気体がエラストマの内部に浸透し、圧力変化により気泡が発生することはブリスター現象(Blister)と呼びます。
ブリスターを避けるためには、次の方法が考えられます。

  • (1) 圧力の降下速度を遅くする。気体の抜け出る時間を与え、雰囲気の圧力とゴム内部の圧力差を小さくする。
  • (2) 高温の場合は温度を下げてから圧力を抜く。高温時はゴムの引張強さ、伸びが低下しているので、温度を下げ強度を回復させてから圧力を抜く。
  • (3) 気体の透過し易いゴムを選ぶ。ゴム内部の気体が抜け出る時間を早くする。(VMQなど)
  • (4) 強度の高いゴムを選ぶ。気体の膨張しようとする力に対する抵抗力を大きくする。硬さを上げることもの一つの選択です。

ブリスターで体積増加(寸法増加)や気泡となったものも、時間経過とともにゴム内部の気体が抜け出るため、長時間たてば元の状態にもどり外見上わからなくなる。
ブリスターが発生しても亀裂に至らなければ必ずしも漏れるとは限らない。ただし、Oリングの使用方法としては好ましくない。
同じ使用条件でも1回で亀裂になると限らず、数回から数百回使用後亀裂が生じることもあります。(一種の疲労要素)。

図4 ブリスター現象の例(BHR Limited 資料より)
図4 ブリスター現象の例(BHR Limited 資料より)
図5 ブリスター現象の例GT社資料
損傷を受けたエラストマーの外観及び断面の状態
図5 ブリスター現象の例GT社資料

このブリスター(ふくれ)現象と呼ばれるが、海外では次の言葉で呼ばれることが多い。ED: Explosive Decompression(急速減圧)による破裂

(続く)

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