密封理論について(6)
2013.09.01
■発行日:2013年9月1日発行 NO.02-61
新シール概論(61)(密封理論について)
シールの密封理論について(続き)
3 運動用シールの密封理論(続き)
油膜厚さの対比の結果を表1に示します。
シールの種類 | ho 押し行程 |
hi 引き行程 |
---|---|---|
Oリング | 443 | 132 |
組合せシール(ステップシール) | 91 | 211 |
試験の条件は次のとおりです。
- 1) 接触幅:約2mm
- 2) 速度:u0 =ui = 0.2m/s
- 3) 粘性係数(η) =0.03Pas
漏れの計算式は次のようになります。
V=NπDH (h0-hi)
それぞれ
- 1) V:漏れ量
- 2) π: 円周率
- 3) D:ロッド径 = 50mm
- 4) H:ストローク=300mm
- 5) N:サイクル数=100サイクル
以上で表1と計算した結果は表2となります。
シールの種類 | 漏れ量(ml) |
---|---|
Oリング | 15 |
組合せシール(ステップシール) | 0 |
これらのように理論から導き出した計算式により、実際の漏れが計算できる仕組みを説明しました。
重要なのは、シールの接触応力を導き出すことが一つのポイントとなります。
前に紹介しましたFEMがこのためにも役立つことがお分かりになったと思います。
シールの形状や材料も漏れを軽減できる要素を含んでいることも言うまでもありません。
密封理論は確かに、従来から多くの研究者が検討してきて歴史があります。
最近、ここまでにたどり着いた感がします。
その他にも多くの要素があることも事実であり、不確定要素も多くあります。
それらの不確定要素には
- 1) 環境温度の影響
- 2) 油温の影響
(以上は油の粘性係数で見ているけれど) - 3) ロッドの表面粗さ・負荷曲線
- 4) ロッドの金属材料・硬さ
- 5) シール表面の粗さ など
このような要素については密封理論には含まれていません。
いままで、難しい理論の展開で、しかも説明が不十分なために理解し難いことがあったと思われます。
シールの摺動抵抗についても最近分かってきたことがありますが、ある式に入れればOKとはまだ言えない状況です。
シールの寿命も同様に推定できないため、あるモデルで実際に試験する以外の方法しかありません。それらはいずれも決定づける要素が多いためであるためです。これで密封理論は終わりにします。
(続く)
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