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冷凍機用冷媒関連について

ご存知のように、1992年の地球サミット(国連環境開発会議)で採択された気候変動枠組条約の条約国により、温室効果ガス排出ガス削減策等を協議している会議のCOP会議では、会議を続ければ続けるほど難しく各国の思惑もあり、けっしてスムースな流れをしていない。

以前から言われている「オゾン破壊」と加えて「地球温暖化」は大きな問題であることは誰もが分かる話ですが、世界で連結して努力して改善が急務であることは必須事項でしょう。さて、産業界でも特に冷凍機に使用される冷媒ガスについての大きな流れがありました。(少し、シールの直接の話から逸脱しますが、シールのゴム材料との関連もあり、ご勘弁下さい)従来、冷凍空調機器の作動媒体として用いられていましたフロンに関しては、相当以前から環境問題から多くの規制が実施されてきました。

まえがき

特定フロン:CFC(クロロフルオロカーボン)は1996年に全廃となりました。その後、その代わりとしてオゾン破壊係数がCFC類より少ない指定フロン:HCFC類(ハイドロクロロフルオロカーボン)も漸次生産量を低減して、2020年には全廃となる見込みです。
オゾン層破壊元素である塩素を含まない冷媒である代替フロンHFC類(ハイドロフルオロカーボン)の開発が進み、先進国でいち早くカーエアコンではHFC-134aに変換され、またエアコンにはHFC類の混合冷媒であるR410AやR407Cが使用されています。(なお、RはRefrigerantの頭文字で、先ほどのHFC134aもR-134aとも呼ばれます)

しかしながら、これらのオゾン破壊係数(ODP)は少ないですが、これらの地球温暖化係数(GWP)が二酸化炭素に比べて数百以上と高いため、1997年にPFC(パーフルオロカーボン)やSF6(六フッ化硫黄)とともに、削減対象ガスに加えられました。

従って、今後は代替フロンも使用の削減が避けられない状況となりました。

NEDOではいち早く国のプロジェクトとして代替促進を進めていました。

まず、既存の使用可能なガスの見直しも進め、更に新冷媒の検討がされました。EUにおいては、この面では常に世界の先頭に立ち、推進しており、先に自動車用エアコン用の冷媒について、段階的禁止を決定している。2011年1月から地球温暖化係数(GWP)150以上の温室効果を持つ冷媒をもつ冷媒の新型車への使用が禁止されました。これはGWP1300のHFC-134aの実質的禁止を意味しています。そのために自然冷媒である二酸化炭素と低GWP冷媒であるHFO-1234yfが期待されています。

しかし、二酸化炭素は国内でも早くから自動車会社で検討が続けてきましたが、種々の問題で未だ市場には出せていないのが、現状です。

カーエアコンに関して

まえがきに記載しましたが、新冷媒については後で述べますが、先にカーエアコンに関する冷媒とゴムとの関連について説明いたします。

現在ではR-134aが使用されていますが、開発時には適合性のあるゴムの検討が行われました。
冷媒に対してゴムとの適合性をみる方法は、以前にも述べていましたが、一番はガスへの浸漬試験を実施します。浸漬試験では、ゴムの物理特性の変化と体積変化率がポイントとなります。
 試験には、以下のような項目があります。

  1. 硬さの変化
  2. 引張り強さ変化率
  3. 伸び変化率
  4. 体積変化率

他方、ガスであるためにブリスタ現象の確認が重要です。(ガスがゴム内に入り込みそれらが影響して発生する破損)
もう一つは透過係数も注意すべき事項です。必然的にゴムはガスを透過しますので、透過し難いゴムの選定が大切です。

これで解決ではなく、カーエアコンには冷媒以外に冷媒油が使用されます。
この冷媒油には、以下のような役割があります。

  1. 減摩作用
  2. 冷却作用
  3. 密閉作用
  4. 防腐作用
  5. 潤滑作用

いずれにしても冷媒油は、その冷媒に対して相溶性が一番大切です。
従って、ゴムとの適合性には冷媒と冷媒油の両方に適合しなければならないことになります。
次表は各種ゴムと冷媒と冷媒油との適合性を見てものです。
(資料は三菱電線工業株式会社のものです)

表1 各種ゴム材料の耐エアコン性
HNBR NBR EPDM CR FKM
R-134a ×
R-12 ×
PAG
鉱物油 × ×
耐熱性 × ×

注)PAGは冷媒油でポリアルキレングリコールを示します。
また表中の○:適性 ×:不適性を示します。

R-134a に対してFKM以外は適合するのですが、一番体積変化率が小さいのはEPDMでした。
しかし、従来の冷媒油には鉱物油(スニソなど)が使用できず、PAGの使用になるので、EPDMも良いのですが、車では新車は良いのですが、古い車では冷媒油を完全に置き換えることが不可能であることから最終的には総合的な評価によりHNBRが採用された経緯があります。

このように冷媒と冷媒油と使用環境も配慮するべき事項がある訳です。
次回は新冷媒について説明します。

新冷媒について

冒頭で述べましたように、既に現在使用している冷凍空調機器用の冷媒がいずれ使用不可になることになります。
地球温暖化係数の小さい自然冷媒の見直しや新規の冷媒の探求が続いています。

いち早く、EUでは自動車ではHFC-134aの禁止が決まり、既に新冷媒のHFO-1234yfの使用が開始されています。国内でもこの新冷媒での実験が開始されて実用化に入りつつあります。

このHFO(ハイドロフルオロオレフィン)は化学式を見るとHFCの仲間ですが、従来の代替冷媒と区別するために、この名称を付けるようになったようです。炭素の二重結合があるため、化学的安定性が弱く、大気寿命が11日と短い。以前にNBRの配合内容でブタジェンにも同様に炭素の二重結合があり、耐候性が悪いと説明したこと同じです。

図2.1 HFO-1234yfの分子構造
図2.1 HFO-1234yfの分子構造

化学式はCF3CF=CH2です。
また他にHFO-1234zeもありますが、同じC、F、Hの数も同じですが、分子構造が異なるものです。
図2.1の下方のF原子がH原子になり、右側のCH2がCFHとなるだけです。

他方、大型冷凍機にはHFO-1234yfより、HFO-1234zeが実用化できやすいとの情報もあります。
どうもHFO-1234yfでは既存の設備では、冷凍能力が不足で大流量を流すような大型化しない使用できないとこです。

しかし、まだ今後、すべてを満足できるような冷媒の探求は続くようです。
すでに、臭化カリウム、前から利用されていたアンモニア、イソブタン(家庭用エアコンでは既に採用されている機種もあります。HFC-134aの地球温暖化係数が1300に対してイソブタンは3と低く全くオゾン破壊係数もHFCと同様に0です。)更にもう一度二酸化炭素も再検討されているようです。蛇足ですがイソブタンはR600aと呼ばれこともあります。
二酸化炭素はガスの中でも、透過に関しては、他のガスと比較して飛び越えてゴムへの溶解度が高いことがあり、案外取りつかいが難しいガスです。
前には、同ガスの超臨界での使用により、無害の洗浄剤として脚光を浴びたことがありました。最近の動きは以前ほど活発ではありませんが。

これら冷媒と冷媒油に関しては、シールとの適合性以外にも各種金属類、樹脂などの影響度合いも同時進行で検討する必要もあり、時間とコストも掛かる研究です。

新冷媒が続々と開発される中、シール材質との適合試験が追い付いていないことが挙げられます。一概には言えませんが、H-NBRが冷媒に対して耐性があり、弊社からのご提案の多くもH-NBRとなります。

他方、R-32(CH2F2)も最近同様に着目されている冷媒です。いずれにしても代替えが急務になっているので、今後の動向に注目すべき事項です。

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