新シール概論(2)シールについて(3)(特別号)
2022.06.30
■発行日:2022年7月1日発行 No.03-100
前号で、ゴム材料は温度依存性が大きいと言いましたが、
これは温度が室温(常温)以上の世界であり、それより低い温度では別の世界となります。
すなわち、低い温度では、ゴムの温度による劣化現象を伴わないと言うことです。
一旦、ゴム材料が低温に晒されると、確かにゴムの硬さは低くなり、ゴム弾性も失いますが、
元に温度に戻れば、元の状態にゴム材料が戻ります。
あくまで、物理的な現象で、化学的な劣化は殆ど受けないことです。
しかしながら各ゴム材料の低温性は個別の値であり、統一のものでありません。
今まで経験では、低温弾性回復温度(TR試験、JIS K 6261)において、
室温で100%伸ばした試験片が低温側で元の10%回復する温度をTR-10値と言います。
一例ではFKMで、TR-10値=-17℃という結果が得られると
そのゴム材料の低温性が次のように求められます。
流体が液体の場合にはそのゴムの漏れない限界は=TR-10値―10℃となることが、実験などで実証されています。
先ほどのFKMの例では漏れる限界は—27℃が限界であるということです。
ただし、流体が気体の場合はTR-10値の温度が限界であるということになります。
現在、詳しい内容は知りませんが、シールの扱っているISO/TC131/SC7でこの低温について審議しているようですので、 また新しい定義などがされる可能性がありそうです。
現在のゴム材料でもっとも低温性のあるゴム材料はシリコーンゴムです。
あるデータではTR-10値が—60℃のものもありそうです。
話は別になりますが、シールについて寿命について運動用でどうですかとの質問が多くありますが、
どうも何時も正解はだせそうもありません。
多くの要因もあり、一概に答えられないが現状です。
特に、空気圧機器では現在、常識的にシールの部品交換は原則としてはなく(一部例外はありますが)、 寿命まで使用するようになっています。
古い話では、往復動用途では走行距離が5,000kmと言われていましたが、
多分、現在ではその倍までになっている様です。
油圧機器では、メンテナスでシールは交換することが多いようですが、
そのタイミングは、過去の実績などにより、異なるようです。
機器も昔とは異なり、機械加工の技術も向上して、
重要である運動用のシール相手面の面粗度も相当、変わっているようです。
表面粗さ以外にも面の性状が変わり、所謂シールに適した油溜めに適したものが、
採用が多くなっているように聞いています。
この点に於いては、日新変わりつつあるように感じています。
他方、多くある質問は各種シールの基本的な使用基準についてのものが多くあります。
各種シールでは、一応カタログなどで指示されていますが、
それより少しずれた場合の質問が多いようです。
(続く)
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