金属製品や樹脂製品を人の目で検査する際に必要となる照明について、選び方のコツやポイントをまとめました。
そもそも、目視の外観検査・表面検査の効率と精度を高めるコツには、下記の環境要素を整えることが挙げられます。
- 照明(均一で影や反射の無い、適切な照度/色温度)
- 視覚の疲労軽減措置(適切な休憩/拡大鏡や眼鏡等の補助ツールを用いる)
- 環境条件の管理(温度/湿度/空気の清潔度)
- 騒音の管理(集中力低下防止)
- 検査スペースの最適化(必要な道具が近くにある/整理整頓されている/作業者が快適に動ける)
- 作業者の訓練(製品知識をもち、検査基準を正しく理解している/定期的なトレーニング)
このページでは、上記のうちの「照明」においてのポイントをまとめています。
目視検査で行われていること
外観検査の一種である目視検査は、不良品を流出しないために非常に重要な作業です。
会社によっては、「検品」という言葉の方が馴染み深いかもしれません。
近年では人手不足の影響もありカメラや検査機器を用いた自動化が進んでいる会社もありますが、多くの検査工程ではまだまだ人が行っている模様です。
検査する際は良品、不良品のサンプルや検査基準を定めて行いますが、人の目によって確認することになりますので、検査員でのバラつきや見逃しがあり検査は大変難しい業務です。
受け入れ検査の場合は、自社と、製造元・納品先・ユーザーでは、検査場所やタイミング、使用している照明や検査員の技量などが異なるため、自社の事務所での検査で合格となった検査対象物が、納品先・ユーザーの倉庫での受け入れ検査で不合格となる事もあります。
また、取り扱っている商品などで検査する項目は様々です。
ここでは製造業における代表的な検査項目を記載します。
形状の検査
形状の検査においては、自動検査機やノギスなど器具を用いて確認されることが多いです。
以下のようなチェックポイントを検査されています。
- 指定されている図面形状と差異がないか?
- 組立に間違いがないか?
- 寸法は公差範囲内か?
- 色味に差異がないか?
仕上がり状態の検査(外観検査)
傷(キズ・疵)・亀裂などは画像検査機を用いられるケースも増えていますが、目視で外観検査する場合も多いです。
主に製品の表面に以下のような異常が無いかを、ライトを使って検査します。
- 商品の表面に傷(キズ・疵)・亀裂
- 凹凸、窪み、突起
- ムラ・色ムラ
- 汚れ(指紋、皮脂)
- シミ
- 黒点
- バリ
- 打痕
- 圧痕
- 異物のかみこみ(ゴミ噛み)
- 指定されたシールが貼られているか?
- 転写不良
- 鬆(ス)
機能検査
生産した部品や商品、機械が仕様通りに動くかどうかをチェックする検査になります。
例えば照明の場合、以下のような検査が必要です。
- 点灯するか?
- 仕様書通りの明るさが出ているか
- 色味にバラつきがないか?
目視検査の見逃し防止・対策方法
目視検査は人の目によって行われますので、目視検査が行われる環境が大事になります。
以下のチェックを1点ずつ実行・改善することで、目視検査の精度は変わります。
- 検査を行うスペースは十分か?
- 検査台はガタつかないか?
- 明るさは十分か?
- 騒音なく集中できるか?
- 検査員の体調は良好か?
- 照明の光の当て方は適正か?
- 休憩時間は適正か?
目視検査用照明とは
ここからは目視検査の環境において重要な役割となる、目視検査用照明の選定のポイントをご紹介します。
必要照度
JISの照度基準というものが各空間や作業場ごとに定められており、製造業の工場内においても、作業内容に応じて必要照度は分けられています。
以下の表は、JIS Z9110-1979「照度基準」からの引用です。
照度(lx) | 場所 | 作業 |
---|---|---|
75~150 | 出入口、廊下、通路、階段、洗面所、便所、作業を伴う倉庫 | ごく粗な視作業、例えば、 ○限定された作業 ○包装b ○荷造b・c |
150~300 | 電気室、空調機械室 | 粗な視作業、例えば、 ○限定された作業 ○包装b ○荷造a |
300~700 | 制御室 | 一般の製造工場などでの普通の視作業、例えば、 ○組立c ○検査c ○試験c ○選別c ○包装a |
750~1,500 | 設計室、製図室 | 繊維工場での選別、検査、印刷工場での植字、校正、化学工場での分析などの細かい視作業、例えば ○組立b ○検査b ○試験b ○選別b |
1,500~3,000 | 制御室などの計器盤及び制御盤 | 精密機械、電子部品の製造、印刷工場での極めて細かい視作業、例えば、 ○組立a ○検査a ○試験a ○選別a |
このように作業内容によって照度基準は定められていますが、「検査」が工程に入ると求められる照度はぐんと上がります。
お客様の中でも検査場の照度は取り決めされているところも多いですが、大体が500lx以上と高照度を基準値にされています。
照度が高いほうがより明るく、傷(キズ・疵)・亀裂や異物などが発見しやすいとされています。
しかし、LEDをはじめとする照明器具の特性として、明るくすればするほど検査ワークからの反射や眩しさが強くなる傾向にあります。
つまり、「照度基準の達成=検査しやすい環境・検査しやすい照度」や、「必要照度=自社にとって適切な照度」とは必ずしも言えないようです。
作業性
高い照度の空間というのは、照明によって検査員の目の疲れや頭痛を引き起こす可能性があります。
例えば、「一カ所だけに強い光が集中する」、「残像が残るようなまぶしさを感じる」という照明をお使いの場合は、作業効率が低下している可能性もあります。
その他にも、「明るさが足りずに、検査対象物が見えづらい」というケースでは、明るくし過ぎると、かえって目が疲れやすくなるというデメリットを招いてしまうことがあります。
反射(ハレーション)
検査対象物に光を当てたとき反射はしていないでしょうか?
反射が原因で傷(キズ・疵)が見えない、所謂ハレーションが発生することで見逃しが起き、不良品流出の可能性があります。
特に、検査対象物が金属製品や白い製品は、反射しやすいです。
「直進的に光るLEDよりも、無電極ランプや蛍光灯のような拡散型の照明のほうが反射しずらい」というお声を、お客様から頻繁にいただきます。
影のでき方
検査対象物を照らしたとき影が濃く出てしまうと死角となり、検査できる範囲が狭まってしまいます。
また検査では拡大鏡を用いて検査しているケースもあり、拡大鏡そのものが影となることもあります。
影の濃さを利用して検査されている場合もあるため、無電極ランプを試していただくと、識別基準としていた影ができにくく、凹凸が見つけにくい等のお声をいただく事もあります。
光の当て方
明るすぎる時は光の当て方や角度を変えないと、検査対象物・ワークの傷(キズ・疵)が見えないということもあります。
作業員ごとに見えやすさの差はありますが、属人的な環境が慢性化してしまうと、引き継ぎが困難となり、若手検査員の育成が困難になる一方です。
局所的な明るさで人による工夫で対処するのではなく、拡がる光など検査ワークが満遍なく照らせる環境へ改善することが必要です。
演色性
演色性とは、照明を通した色の見え方のことを言います。
例えば服を買った際に店内で見た色と屋外で見た色と違った経験はございませんか。これが演色性の違いによるものです。
Raという数値で表され太陽光下はRa=100です。
このRaが100に近いものほど、太陽光下と同じような色の見え方をします。
検査工程においても色を重要視する場合は、照明の演色性をチェックしてください。
検査照明としておすすめの無電極ランプ
検査照明を販売する弊社が最もおすすめの照明は、無電極ランプです。
「無電極ランプをお選びいただける理由」など、ここからは紹介いたします。
無電極ランプが選ばれる理由
水銀灯の置換など空間を照らす照明として利用されていますが、実は無電極ランプは検査照明におすすめです。
なぜなら、LEDは光が1点に集中する点発光である特性に対して、無電極ランプは面発光なので光が拡散するからです。
つまりLEDと異なり、影も濃く出ず、一点に光が集中するということもありませんので、製品の傷(キズ・疵)が良く見えると好評を得ています。
トヨタ自動車様、日産自動車様も一部の検査や刻印を確認する作業では無電極ランプを検査用ライトとしてご採用いただいています。
他、LEDで検査をおこなっており頭痛や目の疲れを訴えていた作業員の方が無電極ランプをデモで試され、頭痛などが改善されたということからそのまま購入いただいたこともありました。
またカメラなどを用いて検査をする場合にもLEDだと光の線が出すぎてしまう、光が強すぎて反射するなどという問題を無電極ランプで解決した事例もございます。
検査用途の実績
2015年頃より検査照明としての利用が広まってきました。
自動車会社や自動車部品の金属および樹脂会社がメインとなります。
以下の素材・用途の現場でご採用いただき、検査効率改善や画像認証化に貢献した実績があります。
特に、傷検査のためのライトとして導入いただいた実績が多いです。
- 金属(アルミニウム、鉄、ステンレス鋼[SUS]、銅、鉛、チタンなど)部品
- 樹脂(塩化ビニル、MCナイロン、ポリプロプレンなど)部品
- 陶磁器
- ガラス
- 印刷物(新聞)
- ゴム
- 床材・木材
- 電装
- 自動検査装置による画像読み取り
- チケットレス駐車場におけるナンバープレート読み取り
- アルミダイカスト
検査用途で使用いただいているお客様からの声
検査場・検査室の様々な課題に対し、照明による対策事例が弊社には数多くございます。
ここからは、事例の一部を紹介いたします。
・印刷メーカー様
蛍光灯とLEDを使用して透過光で検査しているが、蛍光灯は角度によって見えるが照射範囲が狭い、LEDは蛍光灯の状況+直進光によって陰影に差があるという問題があった。
無電極ランプは照射範囲が広く、陰影もできないため検査時に見やすくなりピンホールの見逃しが少なかった。
蛍光灯で透過して検査されていたが、角度によって見えるとこ・見えないとこが出ていたり人によって差があった。しかし、無電極ランプを導入したら、光の当て方や製品の角度の工夫など、作業員による差が減った。
・金属部品メーカー様
LEDを使用して検査しているが、反射で傷や打痕を見逃すという問題があった。
無電極ランプだとハレーションも無く確認でき、反射での見逃しが減った。無電極ランプは、まさしく傷が見える検査ライトだと思った。
・金属加工メーカー様
検査ワーク(シャフト)の形状が複雑で、影ができると見えにくく、仕上げがしづらいという問題があった。
「無影灯じゃないとダメだ」と研磨工程の職人から要望があったが、無電極ランプは影ができにくいので、研磨作業がしやすいということで、職人からもお墨付き!
また、LED直管型よりも少ない台数で高い照度を確保できている点も嬉しいポイント。
設置方法
上記でも記載したように無電極ランプは水銀灯の交換品として需要があり、また無電極ランプは小型化ができません。
弊社が扱う無電極ランプも一番小さなタイプが326x354x117の大きさで約5㎏の重量があります。
この大きさがあるので蛍光灯のスタンド照明よりもパワーがあり照射範囲も広いため好評を得ています。
下記のような、検査台に取り付け可能なスタンドや、キャスター付きで移動できるスタンド等のオプション品を取り揃えております。設置方法を含めてご相談を希望される場合は、ご遠慮なくお申し付けください。
お客様の検査環境に応じ、設置方法を提案させていただきます。
デスクライトのようなサイズの照明をお探しの方は、有機ELをご確認ください。
検査員による明るさの感覚違いを解消する調光機能や、検査員の身長や座高に合わせて調整できるスイングアームである点を評価されています。
※暗室を設けるなどし、他照明や外光に阻害されない環境づくりを推奨しております。
ちなみに、弊社が取り扱っている検査用照明は、設置して使用するタイプですが、ハンディタイプをご希望の場合も、別メーカー品にてお求め可能です。
最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「光の質を確認したい」や「実際の大きさが見たい」といったご要望のために、弊社ではデモ機無料貸出のサービスも行っております。
その他お困りごとなどございましたら、下記お問い合わせフォームより一度お問い合わせいただければと思います。
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