異物混入(コンタミネーション)とは
異物混入という言葉を聞いて何を思い浮かべられるでしょうか。
虫や髪の毛などの異物を思い浮かべる方、食品製造現場などを思い浮かべる方それぞれだと思います。
実用日本語表現辞典によると異物混入は「主に食品の中に、材料とは異なる物が混ざっていること。生産過程において、何らかのミスにより異物が混ざってしまう場合と、悪意を持った者が陳列された食品に異物を入れるパターンがある。」と表記されています。
また、「コンタミ」や「コンタミネーション」とも言われますが、コンタミネーションとは、「混入」という意味です。
厚生労働省では、「コンタミネーションとは、食品を生産する際に、原材料として使用していないにもかかわらず、アレルギー物質が微量混入してしまう場合をいう」と定義されています。
異物混入の種類
異物混入には様々なパターンがあります。
製造ラインで使用している製品の部品や欠片、従業員の毛髪・使用している絆創膏、また虫など製造ラインに関連のないもの、これらが食品に混ざると全て異物混入となります。
異物混入に関するニュース
異物混入が起こると全国的なニュースとなり、自主回収などの金額的損失の発生、企業イメージダウンなど悪影響が及びます。
いくつか異物混入に関するニュースをご紹介します。
・まるか食品:ゴキブリ混入
2014年12月「まるか食品株式会社」が製造する「ペヤングソースやきそば」の中にゴキブリが混入されていたと、ある大学生がTwitterに投稿し、話題になりました。
その後まるか食品は、全商品を自主回収し、生産を全面停止し数十億円かけて設備を新しくするという対応を行いました。
参考URL:
・ヤマガタ食品:パッキン片混入
2021年11月 機械パッキンの破損により、『徳用あらびきウインナー1kg』にシリコン片が混入した可能性があり製品回収を発表しました。
製品回収数量は93ケース(552パック)に及びました。
参考URL:https://kokuchi.shokusan.or.jp/Notification/index/infoNo/202111081
※現在、ページは削除されています。
・ヤマザキビスケット:金属片混入
2019年3月 製造会社の設備トラブルにより金属片が混入している可能性があるため3製品の計約14万8千個を自主回収すると発表しました。
参考URL:
また食品関連とは異なるニュースですが、新型コロナワクチンへの異物混入ニュースを目にされた方も多いのではないでしょうか。
・モデルナ製ワクチン:ステンレス片混入
新型コロナウイルスのモデルナ製ワクチンに異物混入がありました。
異物は厚労省の分析によりステンレスと確認されています。製造時の機器の取り付けミスによりステンレスが混入、一部は品質検査に合格し日本に出荷されましたが接種会場にて異物が発見され16万本が回収対象となりました。
参考URL:
ゴム片など異物混入について
ここまで異物混入の種類やニュースに関して記載しましたが、
ここからは虫や髪の毛の混入ではなく、製造部品で混入されると検出されにくいとされる「ゴム」に関して、
どのような場所でゴムが使用され、どのようなタイミングで異物混入が起こる可能性があるか記載します。
食品製造でゴムが使われている場所
生産ラインには数多くの機器や設備が使用されています。
中でも、運搬用ベルトコンベア、製品の破損防止・飛散防止用クッション、配管の接続部、扉の開閉部のパッキンなど、ゴム部品が使用されている箇所は数多く存在します。
食品工場でとくに多いのは、ヘルール継手という、組付けや分解が簡単にできる継手に使用するヘルールガスケットです。ヘルール継手はその特徴から、日常的に洗浄が必要な箇所に多く使用されており、接合部には一般的にヘルールガスケットが使用されます。
ガスケット材質にはゴム材が多く使用されており、とくに耐アルカリ性、耐酸性に優れたEPDM材質や、耐熱性、スチーム耐性に優れたシリコーン材質が使用されています。
ゴム片の異物混入が起こるタイミング
ゴム製品は、使用環境により程度は異なりますが、外的要因などにより、必ず経年劣化や摩耗が発生します。
先ほどのヘルールガスケットのような配管に使用するガスケットの場合、摩耗し、ちぎれたゴム片は、配管内を通る流体とともに食品に混入する恐れがあります。また、損傷した状態で部品の使用を継続した場合にも、部品の欠損は発生しやすくなります。
ゴムの破片は一度混入してしまうと見つけることは安易ではないため、生産ラインの緊急停止など、甚大な被害を生む可能性も非常に高くなります。
このような異物の混入を防ぐためにも、分解・洗浄毎のパッキンやゴム部品の状態チェックや、金属探知機やX線探知機などの混入対策が重要となってきます。
ゴム片の異物混入を防ぐ方法
ゴム部品は意図していないところで起こってしまいます。
まずは異物混入が起こる可能性を少しでも防ぐために考えられる方法をご紹介します。
メンテナンス周期の見直し
どうしてもゴム部品は損耗することが常です。
平時の損耗に加え、設備を長らく使用していると、どうしても設備自体の老朽化に伴い、ゴム部品への負荷も変わります。生産状況や工場内の温度の変化、また新設備導入により工程に変更があった場合やメンテナンス人員の異動があった場合も同様です。様々な要因によって、部品の損耗率に変化が生じます。
その為に設備の使用頻度や重要度に応じてメンテナンスの計画を建てる必要があり、更に定期的に計画を更新していく必要があります。
その徹底により、ゴム片の異物混入のリスクを低減する手段となり得ます。
強度ある材質の利用
より損耗しにくいゴム材質を使用するという手段もあります。
耐摩耗に優れたゴムや高い引裂き耐性のあるゴム、耐熱性・耐薬品性があるゴムなどの使用です。
設備やラインに応じて必要となり得る性能からゴム部材質を選定することで、異物混入のリスクを低減することも可能です。
製造設備の変更
設備自体を更新することによって異物混入のリスクを下げるという方法もあります。
衛生管理に対する意識や技術は年々向上しており、パッキンレスヘルール等のように異物混入の対策が取られている機器も出ております。
また、どうしても長らく使用している設備だと、老朽のために様々な部品に対してより負荷がかかり、予期せぬ異物混入に繋がります。
それらの理由から製造設備の変更により異物混入対策とする考え方もあります。
ゴム片の異物混入した際の発見方法と対策方法
上記で記載した方法でゴム片の異物混入を防ぐことができればいいのですが、それでも混入が起こる可能性はゼロではありません。また対策内容によっては対策費が高額となる場合や時間がかかるものもあります。
ここからは万が一ゴムの欠けなどが起きてしまった際、どのようなものを使用して、どのように発見するかその対策方法についてご紹介します。
色付きゴムを使い目視検査で発見する
ゴムの部品の材料自体を着色することにより、作業者が目視で発見しやすくする方法があります。
食品と同色のゴムを利用すると目視で発見することは困難です。
製造している食品と異なる色のゴム(例:カラシ製造の場合は赤色のゴムを利用する)や食品ではほとんど使用されない青色のゴム部品を使用すると、目視検査での発見が容易になります。
金属含有ゴムを使い金属探知機で発見する
目視検査だけで発見できるには限界があります。食品の中に異物が混在してしまうと見つけるのは容易ではありません。そのため、金属探知機を用いて異物を検出します。
金属探知機は鉄などの金属に反応し検出が可能になります。ただし通常のゴムは金属が入っていませんので金属探知機には反応せず、そのまま出荷されてしまう可能性があります。
対策として、金属探知機に反応させるために金属含有のゴムがあります。金属含有ゴムを使用していれば万が一ゴム片の一部が混入してしまっても金属探知機に反応しますので、製品出荷前に異物混入を発見することができます。
金属含有で色付きのNKメタルラバーシリーズ
ここからは食品業界へ複数実績及びお引き合いいただいている、弊社が取り扱う金属含有ゴムで色付きのNKメタルラバーシリーズについてご紹介します。
NKメタルラバーの特徴
NKメタルラバーシリーズは、「金属含有ゴム製品」です。
仮に製造ラインに部品が混入した場合、数mm程度のごく微量な欠片であっても、金属検出機・X線検査機で検出可能です。
また食品衛生法に適合しておりますので、食品工場で採用頂くことが多いです。加えて、衛生管理を求められる医薬品工場でもご使用頂けます。
NKメタルラバーシリーズのラインナップ
・NKメタルラバー
ヘルールガスケット形状の製品です。
本製品の色味は、自然界にほとんど存在しない食品の色味である「青色」です。検査機での発見は勿論のこと、目視での早期発見も期待できます。
また食品衛生法適合に加え、FDA(アメリカ食品薬品局)にも準拠しておりますので、海外輸出も検討頂くことが可能です。
NKメタルラバー:
・NKメタルラバーシート
シート形状の製品です。ガスケット形状は勿論のこと、スカート状加工や円筒状加工も対応可能です。
3色(赤/青/灰)から色味を選択頂けますので、ご使用設備や箇所によって色味を分けて識別することも可能です。
「ゴム材質」や「金属粉」、また「硬度」など複数の仕様があります。
下記の表をご確認ください。
ゴム材質 | 反応物質 | ゴム硬度 | 厚み | 幅(最大) | 長さ(最大) |
---|---|---|---|---|---|
ウレタンゴム | SUS粉 | 60度~90度 | 1mm 2mm 3mm |
450mm | 1500mm |
鉄粉 | 80度~90度 | ||||
シリコーンゴム | SUS粉 | 50度~80度 | 2mm 3mm |
450mm | 1000mm |
鉄粉 | 50度~80度 |
※シリコーンゴム・厚み1mmの場合:幅最大300mm 長さ最大300mm
NKメタルラバーシート:
他社金属含有ゴム商品との比較
[NKメタルラバーと他社品の比較]
NKメタルラバーと同様な金属含有ゴムのヘルールパッキンの他社品と比較した表が下記になります。
NKメタルラバー | 他社品 | ||
---|---|---|---|
材質 | EPDM | VMQ、EPDM、NBR、FKM | |
サイズ | 1.0S~4.0S | 8A~15A 1.0S~5.0S |
|
色 | 青色 | 黒色 赤色(VMQのみ) 青色(EPDMのみ) 緑色(NBRのみ) |
|
硬度 | 90度 | 70度 | |
準拠規格 | FDA 食品衛生法 |
食品衛生法 |
他社品とNKメタルラバーの違いとして硬度はNKメタルラバーが90度となっております。硬度が高いとヘルールパッキンを増し締めした際、配管内にパッキン部がはみ出にくくなりますので硬度90度品としております。
また準拠規格としてFDAもありますので海外への輸出も可能です。
当社が取り扱っているのはNKメタルラバーシリーズですが、他社の方がラインナップが充実しております。
もしも当社の取り扱い品で無ければ、他社製品を探して対応させて頂きます。
[NKメタルラバーシートと他社品の比較]
NKメタルラバーシートと同様な金属含有ゴムシートと、金属含有ではないのですがNKメタルラバーシートへの置換前によく利用されているバンコランシートの比較を下記表にまとめました。
NKメタルラバーシート | 金属含有ゴムシート(他社品) | バンコラン®シート | ||
---|---|---|---|---|
材質 | ウレタン シリコーン |
シリコーン フッ素 EPDM NBR |
ウレタン | ウレタン |
厚み(mm) | 1~3 | 1~3 | 0.5~3 | 0.5~10 ※色による |
最大寸法(mm) | 450×1,500 | 300×300 | 530×10,000 | 400×10,000、 500×3,200 |
反応物質 | SUS or 鉄 | 金属 | - | |
色 | 灰、赤、青、黒、緑、黄 | 黒 | オレンジ、乳白色、青、ナチュラル | |
準拠規格 | 食品衛生法 |
NKメタルラバーシートは灰・赤・青・黒・緑・黄と対応しており色のバリエーションが豊富です。製造される商品によって色による識別が可能な他、使う場所によって色を分けることによって、どこで異物混入が起きたのか判別することもできます。
またNKメタルラバーシートは反応物質が鉄粉かSUS粉から選択できます。水分や塩分によるカビを防止する場合はSUSを、より金属探知機での反応を高くするには鉄など目的や使用環境によって使い分けできます。
※バンコラン®はバンドー化学㈱の登録商標です。
NKメタルラバーシリーズの事例
[NKメタルラバーの事例:冷凍すりおろし山芋製造会社]
ご採用いただく前は通常のゴムパッキンを使用されていましたが、お客様からは「通常のゴムパッキンだと万が一欠けて混入した時、気づかず異物混入されたまま出荷されてしまう危険性があるので、そのリスクを事前に回避したい」といったご相談を頂きました。
お客様にはサンプルを提供し、金属探知機で検知できるかどうかテストをしていただき、問題なく検知できたためご採用いただきました。
しかし当初のNKメタルラバーは硬度70度だったため、使用してまもなく増し締めにより少しはみ出たパッキンが山芋の粘り気により、思ったよりすぐ切れてしまうというお話をいただきました。そこで硬度90度品に変更し使用いただいたところその問題は解決され、それからはリピートで購入いただいております。
また、金属探知機で検知可能なだけではなく、色が青色なため目視でも確認しやすいということも採用いただける一因になりました。
[NKメタルラバーシートの事例:袋麺製造会社]
袋麺製造でコンベアから流れてくる梱包前の麺の割れ防止クッション材としてウレタンゴムシートを使用されていました。1日何度も麺があたるため、ゴムが摩耗し異物混入のリスクがあるということでご相談をいただきました。NKメタルラバーシートを提案し、テストいただいたところ、異物混入のリスクが回避できるということで採用いただきました。
[NKメタルラバーシートの事例:食品裁断台での利用]
銀色の裁断台に直接食肉を置いて作業されていましたが、食肉の入っていたプラスチック袋との見分けが付きにくく、プラスチック片の混入の懸念がありました。
そこで、食肉との見分けがつきやすい青色のNKメタルラバーシートを下に敷いて作業することを提案しました。
カラーラインナップが豊富で好みの色があった点や、シートのサイズを自由に選択できた点が決め手となりご採用いただきました。
また、金属探知機で検知可能なことも評価いただきました。
[NKメタルラバーシート 加工例]
NKメタルラバーシートはシートでのご提供も可能ですが、図面に応じた加工品での納品もできます。加工例の写真は以下です。
図1 ウレタン スカート状加工
図2 ウレタン 丸棒加工
図3 ウレタン 円筒状加工
NKメタルラバーサンプルのご紹介
NKメタルラバーですが、使用されている金属探知機の感度設定によって検知できる大きさが異なります。またシートに関しては金属を混ぜている影響もあり、くすんだような色となります。
弊社ではシート、ヘルールそれぞれの無料サンプルを提供しておりますので、購入前に色味の確認やお使いの金属探知機で検知できるサイズ確認などお試しいただければと思います。
「サンプル希望」とご記載の上、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。SNSの発展などもあり、異物混入が起きた際の社会的なイメージダウンや、商品回収にかかる費用は以前より大きなものとなっています。
記載した内容で100%大丈夫というわけにはいきませんが、少しでもゴム片の異物混入対策のお役に立てればと思います。
【異物混入でお困りの方へ】
異物混入等でご相談がございましたら、お気軽に下記フォームよりからお問合せ下さい。