倉庫におすすめの照明の選び方
2021年07月02日
近年、以下のような要因が重なり、倉庫の建設着工数とともに照明需要が増加傾向にあります。
そこで本記事では、倉庫においておすすめの照明の選び方を紹介いたします。
目次
倉庫の特徴によって変わるおすすめの照明
世の中には様々な用途の倉庫があるので、「倉庫」を一括りに捉え、自社の既存倉庫と同じ照明を選ぶことは必ずしも最適解ではないと考えます。
倉庫では水銀灯・LED・無電極ランプなど様々な照明が採用されていますが、各倉庫の特徴に応じた照明を選択する必要があります。
倉庫の特徴とは
倉庫の特徴を【画像】・【作業内容】・【定義】のそれぞれからピックアップいたしました。
画像から分かる倉庫の特徴
Googleで「倉庫」と画像検索すると、以下のような画像が出てきます。
この画像から、「商品が積み上げられている」、「敷地面積が広く天井高は事務所などより高い」 という特徴が分かります。
作業内容から分かる倉庫の特徴
実際の順番は異なる可能性はありますが、倉庫では以下のような作業が行われています。
- 入庫…入荷してきた商品を受け取る・決められた場所に格納・システムへの入力
- 検品…商品に傷や割れがないか、届く予定の商品と間違いがないか確認
- 流通加工…注文している商品に合わせて軽微な加工・梱包数の調整
- ピッキング…出荷する商品を集める
- 仕分け…出荷数量ごとに分ける
- 梱包…緩衝材や段ボールを用いて安全に届けられる形にする
- 出庫…商品の出荷・送り状の作成・システムへの入力
このような作業から「商品の保管だけでなく検品などの作業が伴う」ということが分かります。
また繁忙期や閑散期で商品の入庫量などが異なるため、「商品の移動が行われる」という特徴もわかりました。
定義から分かる倉庫の特徴
国土交通省が定める倉庫業法第二条にて、倉庫の定義が記載されています。
第二条 この法律で「倉庫」とは、物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作物又は物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作を施した土地若しくは水面であって、物品の保管の用に供するものをいう。
出典:国土交通省 物流 『倉庫業法』
この定義から「品質の劣化はNG」、「商品を作り出す場ではなく保管場」という特徴が分かりました。
特徴から分かる倉庫用照明を選ぶ5つの基準
前目次で確認しました倉庫の特徴は、次の6点です。
- 商品が積み上げられている
- 敷地面積が広く天井高は事務所などよりは高い
- 商品の保管だけでなく検品などの作業が伴う
- 商品の移動が行われる
- 品質の劣化はNG
- 商品を作り出す場ではなく保管場
この特徴を照明に当てはめてみると、次のようなことが考えられます。
- 商品が積み上げられている
照明の光が商品にあたり影ができます。
高く商品を積むような倉庫や自動ラック倉庫は、照明による影のでき方に注意が必要です。 - 敷地面積が広く天井高は事務所などよりは高い
敷地面積が広いため、光が広がらない照明を選択すると設置台数が多くなり、イニシャルコストもランニングコストも高くなります。
天井高も高いため、照明の選択を誤ると暗くなってしまいます。 - 商品の保管だけでなく検品などの作業が伴う
検品は明るさも重要ですが、照明の光の質で見え方が異なります。
特に光の質を気にせずに導入するとラベルが反射してよく見えない、太陽光下と倉庫内で色の見え方が異なるなどということが起きます。 - 商品の移動が行われる
荷物量に応じて商品の場所を移動させる場合、照明の真下に商品が高く積まれてしまうと、照明の光が遮られ全体的に暗くなってしまいます。
商品の移動が考えられる場合は、商品を移動させても明るい空間が保たれるような照明を選択する必要があります。 - 品質の劣化はNG
商品によっては保管期間が長くなる可能性もありますが、その保管の間に商品が劣化しないように対策が必要です。
照明が影響する劣化は、紫外線の有無で決まります。 - 商品を作り出す場ではなく保管場
商品を作り出す製造現場ではありませんが、もちろん保管の際のコストも重要となります。
- ① 光の広がり方
- ② 光の質
- ③ 明るさ
- ④ 紫外線の有無
- ⑤ コスト(消費電力と交換)
倉庫照明の選択肢「LED vs 無電極ランプ」
水俣条約による水銀灯の置換需要もあり、天井高さ5m以上の倉庫ではLEDや無電極ランプへの更新が進んでいます。
そこでここからは「倉庫におすすめの照明選択のポイント5点」に当てはめながら、LEDと無電極ランプを比較していきます。
① 光の広がり方
光の広がり方は発光方法の違いが影響します。
点発光・面発光という発光方法の違いがあり、点発光の方が光の広がりは狭いです。
LEDは素子一つ一つは点発光であることに対して、無電極ランプが面発光となります。
では、「LEDの方が光が広がらないのか?」と思いますが、そうではありません。
LEDは小さい素子の設置方法や組み合わせ方、レンズやカバーの工夫により光が広がるタイプ(広角仕様)も販売されています。
よって、面発光の無電極ランプとLEDを比較したとき、無電極ランプよりも広角仕様のLEDもあれば狭角仕様のLEDもありますので、どちらが良いというのは選択する商品によって異なります。
敷地面積が広い倉庫においては、光が広がる照明を使うと配置するトータル台数をほかの照明より減らすことができる可能性があります。
照明の台数を削減できると、設置工事費の削減やメンテナンスコスト削減につながります。
また空間全体が明るくなることで作業場所に制限が要らず、死角がなくなり事故を防ぐことができます。
つまり、倉庫内の環境改善や、人にやさしい現場づくりで貢献できます。
② 光の質
光の質はグレア(眩しさ)で比較します。
先ほどの【① 光の広がり方】で紹介したように、LEDの素子一つ一つは点発光です。
直進性が強く光束が高いLEDを近い距離で見てしまうと、残像が残ったり、眼精疲労や頭痛を招く可能性があります。
無電極ランプは、「光源が近くにあっても眩しくない」と光の質をご評価いただくことが多い照明です。
天井に設置されていて発光面が遠い場所にあると眩しさはある程度低減されますが、発光面が近い検査場での照明は注意する必要があります。
検品作業やフォークリフトで商品をピッキングする際に見上げることが多い倉庫において、眩しくない光の質は作業効率アップにもつながります。
③ 明るさ
作業をする倉庫において、JISの照度基準では200lxが推奨されています。
明るさは、照度設計という資料で事前にイメージを掴むことができ、選択した器具を照らす範囲上に何台設置するかが確認可能です。
ただし、照度設計資料は空間に何も置いていない状態での照度が表記されています。
実際の倉庫には荷物や棚が置かれますので、照度設計で200lxをクリアしていても全体的に暗く感じるということも少なくないです(無電極ランプは影ができづらい)。
![]() LEDの影 |
![]() 無電極ランプの影 |
この画像は、樹脂棒にLEDと無電極ランプを照射させたときの影の濃さの違いを撮影しています。
樹脂棒が倉庫における商品や棚・ラックと仮定した場合、LEDは倉庫内に大きな影がつくり兼ねません。
影が濃くでてしまうと、全体の照度低下につながります。
また倉庫では、最初のラック配置に応じて照明の配置を決めるケースも少なくありません。
実際に、商品の量の変動でレイアウト変更したところ、暗くなってしまったというケースがあります。
無電極ランプは、ラックの配置を変更させても影ができづらいため、明るさを維持しやすい照明です。
④ 紫外線の有無
紫外線の波長とされている380nm以下は、LEDも無電極ランプも波長がほぼ出ていないので、虫が寄りづらく、紫外線による色褪せも防止します。
商品によっては、保管期間を長期化することも期待できます。
その保管期間中、商品の劣化が照明の影響で出ないようにするという点で、LEDと無電極ランプはクリアしております。
⑤ コスト(消費電力と交換)
今回はコストとして、消費電力と交換費用について比較します。
- 消費電力
空間広さ32m×24m、設置高さ6mの倉庫で200lxを実現させるには、それぞれ以下になります。(LEDは選択する商品によってまちまちです)LED:消費電力70W/台の器具を24台設置して200lx⇒総消費電力は70W×24台=1,680W
無電極ランプ:消費電力200W/台の器具を12台設置して200lx⇒総消費電力は200W×12台=2,400Wよって、現在はLEDの方が省エネ傾向にあります。
ただし設置台数が異なります。
設置台数が少ない場合、メンテナンス費や設置工事費は安くなるメリットが挙げられます。 - 交換費用
交換費用については設置台数と照明の寿命が影響します。
LEDの定格寿命は40,000~60,000時間に対して、無電極ランプは60,000~100,000時間の定格寿命です。
但し、安定器の寿命が40,000時間程度のため、ランプ寿命よりも先に寿命へ到達する可能性が高いです。
定格寿命12,000時間である水銀灯のように、安定器寿命未満の定格寿命を持つ照明はランプ交換が必要なので、毎度ランプ交換に時間・手間が掛かります。
逆に、安定器寿命以上の光源寿命の照明の場合、交換費用は削減できる可能性があります。
倉庫用照明選びの失敗例
それぞれの倉庫において、使い方/広さ/保管している商品/働いている人数/入庫から出庫までの流れ/作業内容/環境など、異なる点がたくさんあります。
自社の倉庫の特徴を考慮せずに照明を選定して失敗する例がいくつかありますので、ご紹介いたします。
照度不足
照明と荷物まで距離が離れていると良いのですが、荷物が天井近くまで積まれている場合や、ラックの高さが天井近くまである場合などは照度不足になる可能性があります。
光は何かにあたると影になります。
ラックの間に照明が配置されていると良いのですが、レイアウト変更・改善を行って照明の真下に荷物が移動されると全体的に明るさが劣ります。
また照明によって光の広がり方も異なりますので、[水銀灯400W]から[水銀灯400W相当]という表記のみでLEDに変更すると、光の広がりが異なり想定していた照度に足らず、暗く感じるということもあり、弊社へご相談いただいたことがあります。
ラベルが見えない
照明を変更して、明るくなったのにラベルが見えないということもあります。
これは照明によって光の質が異なるため、光がラベルに反射して見えないということに繋がります。
また光が広がりが少ない照明の場合、天井近くのラベルは光が届かずに暗いということが起きる可能性もあります。
ラベルが見えないと商品出荷ミスやピッキング作業の効率悪化につながる可能性もありますので、デモ機などで確認することを推奨します。
影が濃い
照明を変更することによって、物品棚・倉庫ラックの影が濃くなるということもよく起きます。
これも光の質や広がりが影響しています。
影が濃く出ると、その箇所が死角となり倉庫全体が暗い印象につながる他、フォークリフトなどを運転される際は事故につながるケースもあります。
同じ照明配置・同程度の照度の照明に変更しても、照明の種類が変わると影が違うということは変えてから初めて分かるため、案外見落としがちかもしれません。
眩しい
ラックから商品をピッキングする際、天井近くを見上げることはないでしょうか。
倉庫に採用されている中でも、目に光が入っても眩しくない照明と眩しさを感じて残像が残る照明があります。
見上げる高さ/照明の位置/照明の角度/照明の光が目に入る時間の長さ/人によって感じ方が異なるということもありますが、目に残る残像や眩しさは確実に作業員の方への負担・疲労として蓄積し、知らず知らず作業スピードが落ちるというケースもあり得ます。
まとめ
倉庫は工場と比較して明るさを必要としないケースが多いため、既存照明である水銀灯の設置ピッチが広いケースがあります。
同じ配置で[水銀灯400W相当]の照明を選択したとしても、光の広がりや照明の点灯方法によって暗く感じたり、逆に明るく感じたりという状況が考えられます。
検品作業が多い倉庫/ほとんど人が出入りしない倉庫/自動倉庫など、用途や重要視するポイントによって、その倉庫におけるおすすめの照明器具は異なります。
弊社ではお客様が重要視されるポイントに応じて、照明の選定と提案をさせていただきます。
倉庫での実績も多くございますので、ご質問やデモ機のお貸し出し希望などございましたら、下記フォームよりお問い合わせをお願いします。