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新シール概論(2)運動シール用補助材

■発行日:2022年3月1日発行 No.03-96

ここでは、運動シール用補助材について説明します。

 運動シール用の補助材は、摩擦抵抗の軽減や摩耗低減を目的としたもので、シール性改良材的なものではありません。(このあたりは、固定シール用補助材とは異なる意味を持っています。)

 機能的にみると、補助材は潤滑剤と冷却剤に分けることができます。

 まず、潤滑剤としては次のような特性を備え持つ必要があります。

  • 低摩擦特性が得られる。
  • 駆動軸の表面を摩耗させない。
  • 焼付きを起こさせない。
  • 駆動軸や周辺機器に、腐食やその他の有害な影響を与えない。
  • 物理的にも化学的にも変質したり、また反応を起こさせない。
  • 潤滑膜が容易に破断・剥離をしない。

こうした特性を持つものに、固体潤滑剤、流体潤滑剤、こう質体潤滑剤(グリース)があります。

  • 固体潤滑剤

固体潤滑剤としては、黒鉛、雲母、二硫化モリブデン、PTFE等があり、一般工業用としては、二硫化モリブデンと黒鉛が多く利用されています。

 回転シールでは液体潤滑剤が主体で、固体潤滑剤は二次的な効果を配慮して、シール材の表面に塗布されています。

  • 液体潤滑剤

 ブレードパッキンに含浸された潤滑剤は、初期潤滑の役目に足る性能と目的に応じた耐薬品性や非汚染性を考えて選定されており、主体は石油系油、動植物油、合成油(シリコーンオイル、ふっ素オイルなど)です。

 運動用シールの補助材として見る場合は、ランタンリングから注油し、潤滑、冷却、液封作用を期待して使用されます。

  • グリース

 液体潤滑剤は、流出し易いために同じ目的で粘ちょう性のあるグリースが多用されています。

グリースは、鉱油や合成油に金属石鹸(ナトリウム、リチウム系)と粘ちょう剤を混合して得られるペースト状の潤滑剤です。

一般には鉱物系のものが多く、Oリング、リップシール、オイルシール等の補助材として使用され、また80℃以下の回転機器シール材に塗布して使用されています。

合成油系グリースとして、シリコーングリース(蛇足ですが、EPDM用に使用してください。間違っても鉱物系は使用不可です)

及びふっ素グリースがあります。特にシリコンーングリースは、低温特性が良くLNGや液体空気などの低温バルブ用として最適です。真空用にもお勧めです。

 耐薬品性を要求される場合は三ふっ化塩化エチレン樹脂を基材にしたふっ素グリースが優れているが、これとてPTFEと同じ耐薬品性はなく、有機溶剤に溶けるものも多いので、注意すべきです。

 またふっ素グリースは低温性が悪く、耐熱性も150℃程度と使用温度範囲が狭い点に注意しなければならない。(参考資料は密封装置選定のポイントです。)(続く)

 

FAX通信4年3月

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