省エネといっても、工場で省エネする方法は様々です。製造設備、パソコン、空調、照明など電力を消費するものが工場内ではあふれています。その中で今回は、照明に注目し省エネ照明の選び方を解説します。
弊社が照明を扱いだした2013年から照明業界は変化し、お客様の要望や比較するポイントも変わってきました。「もっと省エネしたい」「水銀灯を変えて省エネ照明にしたい」「10年前に変えたLEDをそろそろ交換したい」などで照明を検討されている方はぜひお読みください。
省エネが求められる背景
そもそもなぜ世の中的に省エネが求められているのでしょうか。考えられる背景をまとめました。
SDGs
・SDGsとは
外務省ホームページによると
『持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、ミレニアム開発目標(MDGs)後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標』と記載されています。
その目的は、貧困を終わらせ、地球環境を守り、全ての人々が平和と豊かさを享受できる世界を実現することにあります。
・SDGsと企業の役割
SDGs登場の背景には、近年の地球環境や経済・社会の持続可能性に関する世界的危機意識の高まりがあります。近年の地球環境問題や社会問題などは、より深刻化し政府や国際機関だけでは対処しきれなくなってきているため、民間企業や市民社会などの積極的な関与が求められています。特に、民間企業は社会や経済に与える影響が大きいため企業の役割は重要になっています。
目標の中には「エネルギーをみんなに そしてクリーンに―持続可能なエネルギーの選択を―」という省エネに関わるものもあり、世界の電気普及や燃料資源枯渇の問題からエネルギーの効率化や再生可能エネルギーへの移行を目指しています。このような国際目標などを背景に企業は省エネが求められています。
(外務省HP)
電気代高騰
電気代が高騰している理由の一つは、東日本大震災をきっかけとした原子力発電の稼働停止による電力不足です。それまで、原子力発電による電力供給の割合が高かったことから、需要と供給のバランスが崩れ電力不足に陥り、不足分の多くを火力発電でまかないました。日本は、国内のエネルギー資源が乏しく、石油・石炭・液化天然ガス(LNG)などを海外からの輸入に頼っているため、世界情勢の影響を受けやすいという問題があります。近年のロシアのウクライナ侵略や円安などから燃料費の価格高騰が起き、それに従い電気料金の高騰も起きています。
電力を多く消費する企業はこのような電気代高騰の影響により、以前よりもさらに省エネが求められています
省エネ法
・省エネ法とは
省エネ法とは石油や石炭などの化石燃料に依存する構造を改善し、非化石エネルギーの利用に転換することで経済の発展に役立つことを目指す法律です。その背景には、1970年代に起きた二度のオイルショックがあり、エネルギー資源の不足と価格の高騰が深刻な問題となったことから、エネルギーの効率的な利用が求められるようになりました。
・省エネ法の目的、規制される分野
省エネ法の目的は、エネルギー消費の抑制と効率化を推進することで、経済の安定と環境保護を図ることです。
省エネ法がエネルギー使用者に対して直接規制する分野は、工場・事業場及び運輸分野です。エネルギーの使用状況等について定期的に報告させ、取り組みが不十分な場合には指導・助言や省エネや非化石転換等に関する取り組みの見直しや計画の策定等を行うこととしています。また、エネルギー使用者への間接規制として、機械器具等(自動車、家電製品や建材等)の製造または輸入事業者を対象としており、機械器具等のエネルギー消費効率の目標を示して達成を求めています。
照明で省エネするには
照明で省エネするにもいくつか方法があります。簡単にできるものもあるので、参考にしてください。
照明自体を変更する
現在使用している照明の消費電力(W数)より、消費電力が低い照明に変更することで省エネになります。(例:100Wの照明を80Wの照明に変更すると20%省エネになる)
ただしW数だけで判断すると、「暗くなった」「サイズが合わない」などということが起きる可能性もありますし、もちろん照明を変更するとなるとイニシャルコストがかかりますので、ご注意ください。
もし従来の照明(水銀灯、メタハラ、セラメタなど)を使用している場合は、消費電力が低いLEDなどの省エネ照明に変更することをオススメします。
設置台数を減らす
設置している照明の数を減らすことで、省エネになります。(例:20台設置から16台設置にすると20%省エネになる)
ただし、むやみやたらに減らすと「照度ムラができてしまって疲れる」「全体的に暗くなる」などということも起きる可能性があります。もし新規で照明を設置するとき、できるだけ台数を削減したいということであれば、照明自体の配光(光の広がり)ができるだけ広い照明を選択することで、光と光が重なり空間全体を明るくすることができます。
点灯時間を短くする
点灯時間が短くなれば省エネになります。水銀灯のように点灯までに時間を要する照明の場合、お昼休憩の1時間など消灯するのが躊躇われたかもしれませんが、LEDだと即時点灯するため、お昼休憩などのちょっとした時間、照明を消灯すると省エネできます。ただし、照明で最も電力を使うのは点灯時になりますので、トイレ休憩などの短い時間はつけたままの方が良いかもしれません。
まずは、使用しない時間に照明をつけっぱなしにしていないかをチェックしてみましょう。
太陽光や風力の自然エネルギーを活用
太陽光発電、風力発電など自然エネルギーを活用することで省エネができます。電気を購入する形ではなく電気を工場内で作り出し工場内で消費する電気の自給自足を行えば、電気代は安くなります。
ただし、当然ですが設備を整えるイニシャルコストは発生しますので、何年で償却するかなどの検討は必要です。
最も省エネ効率が高い照明、LEDの進化
1879年に世界初の照明器具・白熱電球が発明されてからというものの、照明は省エネ効率を上げていき、様々な進化を遂げています。
水銀灯もメタハラ、セラメタと改良が繰り返され進化したように、LEDもこの10年であらゆる点が進化しました。
ここからは爆発的に普及した、この10年間のLEDの進化について紹介したいと思います。
省エネ率向上
蛍光灯40W2灯用を例に紹介すると、LEDが本格的に広まり始めた2010年頃、相当する明るさを得るための直管LEDの消費電力は54Wほどでした。
それが改善され、2014年ごろには36Wまで消費電力が下がっています。
さらに2018年頃一体形LED器具が改善され、25Wまで消費電力が下がっているため、初期の器具と比較して54%も省エネになっています。
※参照:一般社団法人日本照明工業会
工場などで使用される高天井用LEDも、2012年ごろは水銀灯400W相当がLED200Wほどで同等の明るさでしたが、今では水銀灯400W相当で100Wを切るというのも珍しくありません。
このようにLEDの省エネ率はどんどん向上しています。
耐環境性
省エネ率と共に、2010年頃は不得意とされていた環境でもLEDは使用できるように進化しました。
- 高温環境:通常のLEDは耐熱温度40℃ほどですが、カバーや安定器の別置きなどの工夫で耐熱60℃以上のLEDも発売されています。
- オイルミスト、蒸気環境:工場関連へのLEDの需要が高まると共に、環境に応じたLEDが発売されています。
- 振動や衝撃環境:振動する場所には使用ができなかったLEDですが、あらゆるテストなど実施され耐振動用のLEDなどが発売されています。
このようにLEDが使えるエリアというのは、どんどん広がっています。ただ、やはり特殊な環境用のLEDとなれば金額は高価となります。
照明取扱い会社数
水俣条約が採択され、多くの工場で使用されていた水銀灯が規制対象になったことがきっかけで、2013年頃から急激にLEDをはじめとする省エネ照明の取扱い会社が増えました。
元々は照明に関係がなかった異業種の企業が海外から照明を輸入販売をしており、「あの会社からもPRを受けた」「昨日も飛び込み営業があった」などとお客様から聞く機会も多くありました。
このように急激に照明扱い会社は増えましたが、販売していくうちに照度データが作成できない、不点灯トラブルの対策ができない、他社との差別化が計れない会社はどんどん淘汰されていきました。
LEDの選び方と注意すべきデメリット
このように進化を遂げたLEDですが、器具の特性や性質上変わらない点や、変えようとすると高額になる製品があります。照明を選ぶ際に注意すべきポイントや事前に把握しておくべきデメリットを記載します。
まぶしい
LEDは直線的な光のため、まぶしいと感じやすいです。車のヘッドライトを直視して眩しかったご経験はないでしょうか。
工場では、見上げたときにLEDを直視してしまったり、光沢のあるものや白に近い色のもの(または壁)に反射して多くの光が目に入る場合にまぶしいと感じやすいです。照明がまぶしいと、目が疲れたり、場合によっては頭痛などの体調への影響が考えられます。
器具一体交換
従来から使用されている水銀灯や蛍光灯は電球のみ交換で済みましたが、LEDは点灯しなくなると、照明器具一体交換する必要があります。交換作業を行うには電気工事士の資格を取得している必要があるため、電気工事業者へ依頼することがほとんどです。交換工事の日程調整や、作業場所の確保などの手間が掛かります。
しかしLEDは4~6万時間の長寿命照明なので、寿命通り点灯してくれると頻繁に交換する必要はありません。
直下しか明るくならない
LEDの光の広がり方は、スポットライトのように直線的なので、照明の直下は明るいですが、直下から離れるにつれて照度が低くなります。明るい箇所と暗い箇所が発生すると、その差が大きいほど全体的に暗く感じます。例え照度基準を満たしていても、見え方は暗く感じるため、作業効率の低下につながります。
工場でおすすめの省エネLED照明"MKO-Sシリーズ“
LEDといっても各種メーカーが進化を遂げた照明器具を販売しています。
ここからは弊社が扱う、工場でおすすめの省エネLED照明MKO-Sシリーズについて紹介します。
MKO-Sシリーズの特徴
MKO-Sシリーズの1番の特徴は広角レンズを使い光を広げている点です。
LEDのデメリットで記載したように、本来LEDは真下を照らすのが得意な照明で、光が広角に広がる水銀灯からLEDに変更すると、直下は明るくなったのに照明と照明の間は暗いといった照度ムラが発生していました。
このLEDのデメリットを特殊広角レンズを使用することで光を全体に広げているのがMKO-Sシリーズの特徴です。光が広がると水銀灯からの置換でも違和感なく明るい空間を実現できるだけでなく、他のLEDよりも設置台数が削減可能です。詳しくは後述します。
他社LEDと比較したMKO-Sの明るさ(1台)
1台当たりの消費電力を以下の条件で比較しました。
比較条件
①照度範囲:20m X 20m(中心に1台設置) ②設置高さ:8m ③反射率:天井30%/壁20%/床10%
※保守率は各社公開中配光データによる
HF700W相当の器具 | 平均照度(lx) | 最小照度(lx) | 最大照度(lx) | 消費電力(W) | lm数(lm) | 発光効率(lm/W) |
---|---|---|---|---|---|---|
MKO-S-120 | 48.1 | 1.6 | 116.7 | 120 | 14,400 | 120 |
A社 | 43.0 | 4.3 | 177.9 | 135 | 25,000 | 185.1 |
B社 | 45.5 | 2.9 | 151.3 | 138.6 | 25,300 | 182.5 |
C社 | 44.5 | 8.4 | 129.0 | 155 | 27,300 | 176.1 |
D社 | 51.4 | 10.1 | 151.1 | 182 | 34,600 | 190.1 |
この表を見てどの照明が一番良いと判断されるでしょうか?
最大照度が最も高い器具が一番明るいと言えるかもしれませんし、消費電力が一番低い器具が省エネの観点で良いと言えるかもしれません。
この表の中で特に注目いただきたいのは平均照度と発光効率です。
発光効率は、1Wの電力でどれだけ光量が発生しているかを表しています。よって発光効率が高い器具というのは1W当たりで光量が多く出ています。
平均照度は、文字通り設計範囲内の平均の明るさを表します。この平均照度が高いほうが空間全体の明るさとしては明るく感じます。
この内容を見ると発光効率が高い器具が平均照度も高いと思われる方もいるかもしれませんが、違います!
表で比較いただくと発光効率は、D社>A社>B社>C社>MKO-S-120 の順に高くなっていますが
平均照度は、D社>MKO-S-120>B社>C社>A社 という順番に高くなります。
このように「発光効率が高い=平均照度が高い」とならないのは、器具1台当たりの光の広がりが関係します。
これは複数台設置した比較をするとよく分かりますので次項に記載します。
省エネ率No.1のMKO-Sシリーズ
省エネ率No.1というのは、照明1台当たりのW数と設置台数によって変わります。明るさ、点灯時間などは同条件とし他社の照度データと比較したデータを表にまとめました。
照度設計条件
①平均照度:300lx ②建屋寸法:20m X 20m ③設置高さ:8m
④稼働時間:1日10時間×月20日×12か月=年間2,400時間 ⑤電気単価:20/kwh
HF700W相当の器具 | 平均照度(lx) | 最小照度(lx) | 最大照度(lx) | 器具消費電力(W) | lm数(lm) | 発光効率(lm/W) | 必要台数(台) | 消費電力(kW) | 年間電気代 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
MKO-S-120 | 322 | 129 | 444 | 120 | 14,400 | 120 | 9 | 1.08 | ¥51,840 |
A社 | 312 | 129 | 403 | 135 | 25,000 | 185.1 | 9 | 1.22 | ¥58,320 |
B社 | 318 | 129 | 426 | 138.6 | 25,300 | 182.5 | 9 | 1.25 | ¥59,875 |
C社 | 316 | 145 | 421 | 155 | 27,300 | 176.1 | 9 | 1.4 | ¥66,960 |
D社 | 330 | 146 | 427 | 182 | 34,600 | 190.1 | 8 | 1.5 | ¥69,888 |
この表を見てどの照明が一番良いと判断されるでしょうか?
MKO-Sは、発光効率が一番低いですが、他の高効率器具と同条件で比較したとき消費電力や電気代が優位になります。
この差というのは光の広がりが関わっています。MKO-Sは上述したように特殊レンズを使用しているため、広角に光が広がります。広角に光が広がると光と光が重なり、明るい空間を作り出すことができます。
「発光効率高い=明るく省エネ」とイメージ持たれている方は多いですが、この表でそうとは限らないということが分かっていただけると思います。
ぜひMKO-Sシリーズの商品ページもご確認ください。
最後に
記事途中で照明取扱会社は淘汰されていったと記載しましたが、それでも選択肢はたくさんあります。省エネは企業にとって大きなテーマになります。省エネする方法は様々ありますが、もし照明での省エネを検討される場合、この記事がお役に立てれば嬉しく思います。安い投資ではありませんので、どうぞ慎重に選択ください。
弊社にお問合せいただきましたら、照度設計はもちろんのこと他社メーカー品とも比較した上で、最適な提案をいたします。
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