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照明の寿命の考え方とは?

各照明器具のカタログを見ると、照明の寿命について記載があります。
また実際に更新先の照明を探されている方は、寿命を重視されることが非常に多いです。

しかし、カタログに記載された寿命より短期間で切れて、「思ったよりも照明が早く点灯しなくなった」といったことはありませんか?
照明が点灯しなくなった原因に依存するので一概には言えませんが、寿命を算出する方法を誤っていたことが原因で「寿命が短い」と感じられた可能性もあります。

この記事では、そういった誤解をなるべく解消すべく、照明の寿命の考え方について紹介していきます。

照明の寿命とは

照明器具の寿命は、電子部品(=電気絶縁部品)の寿命定格寿命(光源寿命)によって定義されます。
それぞれ簡単に説明すると、以下のような内容です。

  • 電子部品の寿命=ランプ以外(安定器やソケットなど)の寿命
  • 定格寿命=ランプの寿命

つまり、ランプとランプ以外とで寿命の値が異なっているのです。
しかしカタログに記載されている「寿命」は、照明器具自体ではなく、光源のみの寿命を指す定格寿命のみの記載であることがほとんどです。
そして、電子部品の寿命と光源寿命の値のギャップにとって、冒頭の誤解を招く一因となっています。
例を挙げると、カタログ表記の光源寿命より電子部品の寿命の方が実際は短かった場合です。

まずは電子部品の寿命と定格寿命について、詳しく見ていきたいと思います。

電子部品(安定器)の寿命とは

ここで言うところのランプ以外の部品とは、主に安定器が挙げられます。
安定器は不安定な放電現象を利用した放電ランプへ、過剰に電流が流れないよう安定させる装置です。
照明器具の心臓部とも呼ばれることもあり、非常に重要な部品です。

各機関によって寿命に対する考え方が若干異なりますので、それぞれ紹介したいと思います。
※ご使用環境によって実際の寿命は異なります。

JISが定める安定器の寿命

JIS(日本産業規格)で照明器具について定められているJIS C 8105-1:2021では、8~10年が適正とされています。

電気用品安全法が定める安定器の寿命

経済産業省のHPに掲載されている電気用品安全法『別表第十一 電気用品に使用される絶縁物の使用温度の上限値』によると、安定器に含まれる電機絶縁材料の性能維持時間を原則40,000時間と定められています。
尚、この資料には材料ごとの温度限界も明記されています。
但し、30,000時間に到達したあたりから、摩耗故障期に入るため注意が必要です。

定格寿命とは

既に触れた通り、定格寿命とはランプの寿命のことですが、照明が光束維持率が70%に達した時点の平均寿命を指します。
また光束維持率とは、照明設置後明るさがどの程度減退したかを示す値のことを言います。

言い換えると、新品取付時の照明の明るさ[100%]が、経年や継続使用などの部品の劣化により明るさ[70%]へ落ち込むまでに掛かった平均時間のことです。
平均ですので、メーカーのカタログ記載の定格寿命に到達した途端、照明が点灯しなくなるということではありません。
あるいは、保証期間超過後に球切れなど不点灯となった場合も、寿命に到達したと言えます。

「光源寿命」や「ランプ寿命」といった言葉もほぼ同じ意味を示し、前述の通り、カタログ上の寿命は定格寿命を表記することが一般的です。
また水銀灯LED無電極ランプなど、それぞれの照明の種類によって定格寿命は異なります。

各照明の定格寿命

次に照明の種類ごとの定格寿命を紹介したいと思います。
以下のグラフを参照ください。

照明器具の寿命比較

ここでも分かる通り、やはり安定器(電気用品安全法の40,000時間)以上の寿命を持つ照明と安定器の寿命未満の照明があります。

照明器具の寿命について

安定器の寿命とランプの寿命を踏まえ、他機関の考え方を参考にしながら、照明器具そのものの寿命について考えたいと思います。

[国税庁]減価償却資産が定める照明の寿命

国税庁が策定した『主な減価償却資産の耐用年数表』において、建物に附属する設備として電気設備の耐用年数を15年としています。

日本照明器具工業会が定める照明の寿命

日本照明器具工業会は、これまで見てきたJIS・電気用品安全法・減価償却資産の思考を鑑みています。
適正交換時期を8~10年/耐用の限度を15年としています。

尚、弊社の寿命に対する思考も、日本照明工業会に則っております。

照明器具の適正交換時期

どの寿命の基準を重視すべきか

様々な観点から照明の寿命について紹介してきましたが、弊社としては、安定器の寿命以上を持つランプ寿命を持つ照明器具をお使いいただくことがおすすめとしております。
例えば、LED無電極ランプなどです。
その理由としては、照明器具の寿命を最大限活かせる選択肢だからです。

これまで紹介してきたように、安定器の寿命は30,000~40,000時間、かつ10年間の使用での交換を目安とされています。
照明ごとの定格寿命は様々ですが、安定器の寿命は照明による大きな差がありません。
つまり、安定器の寿命以上の定格寿命を持つ照明であれば、安定器の寿命を全うさせて、コストペイできるからです。

但し、粗悪な電信部品を使用していると、安定器の定格寿命未満の期間しか使用できないリスクが高まるため、注意が必要です。

なぜ適正交換時期を超えるべきでないのか?

安定器・ランプの適正交換時期に到達してそのまま使用できたとしても、器具内部の損傷・劣化が著しい場合があり、事故を引き起こす危険性が存在するからです。

確かに長持ちしたのでそのままお使いいただけると、更なるランニングコストの削減に貢献できます。
しかし、照明器具は、外観では判別できない電気回路や配線や、安定器・ランプ以外にも防水パッキンのように交換が必要となる部品の劣化が酷く進行している場合があります。

弊社も日本照明工業会が説明する通り、仮に安定器・ランプともに寿命が長く持ったからと言って、耐用限度15年以上お使いいただくことはお控えいただくよう説明しています。
メーカー推奨の使用期限は遵守し、安全に使用してください。

なぜ定格寿命が使われるのか?

そもそも、なぜ定格寿命で説明されることが主流なのでしょうか。
その理由は、現在では器具寿命以上の定格寿命を持つ照明が主流ですが、元々器具寿命よりも定格寿命の方が短かったからです。

高天井向け照明として現在流通しているLED無電極ランプなどが登場するまで、照明器具は安定器よりもランプの方が先に寿命に到達していました。

定格寿命<器具寿命

既に紹介したグラフにあった通り、例えば水銀灯がその代表です。
水銀灯が広く採用されていた時代よりも照明器具の技術進歩が著しく、現在高天井で使用される照明の寿命関係は逆転しています。

定格寿命>器具寿命

当時のその名残もあり、安定器のみで一元的に寿命を確認するのではなく、照明ごとに性能比較できるよう現在でも定格寿命のみの記載が一般的とされています。

照明の寿命が長いことによるメリット

メリット① 交換頻度を減らすことができる

工場倉庫をはじめとする天井高5m以上の環境は、事務所や住宅の蛍光灯のように、気軽に電球の交換ができるわけではありません。
水銀灯メタルハライドランプなどが使用される工場倉庫は天井が高いため、電気工事業者に電球を交換を依頼することが一般的です。
工場の例を挙げると、照明の真下に製造設備が設置されている箇所が多いため、交換のために設備を停止させる必要があるケースがあります。
この交換の煩わしさを、長寿命な照明は減らすことができます。

メリット② 企業のSDGs活動に貢献できる

現在安定器以上の定格寿命を持つ長寿命照明は、従来使用されることが多かった水銀灯などよりも省エネ効率が高い照明ばかりです。
寿命が短い照明の継続採用は消耗品の廃棄頻度が高いため、SDGsに相反した活動となり兼ねません。
廃棄物を減らすことと省エネ効率向上の観点から、カーボンニュートラルや脱炭素社会への貢献にもおすすめです。

定格寿命の長さが特徴の無電極ランプ

弊社は照明器具の中でも、長寿命が特徴的な無電極ランプを取り扱っております。
安定器寿命の目安は他と同様に40,000時間程度ですが、定格寿命は60,000~100,000時間を誇ります。
LEDは眩しさや反射など、光の質に課題を持っていると指摘されることが多い一方、無電極ランプは太陽光に近く直視してもあまり残像が残りません。

但し、長期間お使いいただくほど寿命に達する可能性は高まります。
突然照明が使えなくなると工場の生産や倉庫の作業などに影響が出ますので、計画的な照明更新をおすすめしています。

おわりに

照明器具の寿命の考え方への理解について、少しでもお役に立てれば幸いです。
更新先照明で迷われている際や最後に紹介しました無電極ランプのことについてなど、ご質問・ご相談がございましたら以下の問い合わせフォームより、お問い合わせください。

【執筆者:Y.N.(一般社団法人照明学会 照明コンサルタント)】