新シール概論(2)シールについて(4)(特別号)
2022.08.01
■発行日:2022年8月1日発行 No.03-101
シールの設計については、案外秘密事項が多いことをご存知でしょうか。
例えば、Oリングの場合には寸法が明確に示されているので、
使用するハウジングなどは、正確に設計できます。
他方、往復動用のシールに使用されているUパッキンについては、
各社とも詳細寸法は、表示はしていないのが、現状です。
Uパッキンのいわゆるはり代は不明ですので、
カタログや取り交わす図面にもノウハウで明示されていない。
同様に組合せシールでは摺動側に付属する部品の寸法は、
基本的に明示されていないのが、一般です。
この例はUパッキンと同様の理由です。
そうみると案外、不親切な業界のイメージを持つかも知れませんが、
一種の企業機密に属することが多いようです。
他の質問で多いのは、ゴム材料と使用する流体との適合性の問い合わせです。
例えば、環境問題で、取り上げることも多いのは冷媒ガスです。
どんどんと新しい冷媒ガスが出てきますが、
それに適合するシール用ゴム材料で、なにを使用するかです。
現在、主力はHNBRやEPDMなどになってきていますが、
やはり実験を行い明確にする必要があるようです。
この場合には同時に使用される冷媒油にも影響するので、 セットで考える必要があります。
脱ガソリンで水素を使用する機器が増加傾向にありますが、
高圧ガス(水素)の場合には、ゴム材料に発生するブリスター現象に注目する必要があります。
これには、現在EPDMの使用がメインで使用される方向性が出ています。
80MPa程度の高圧であるためと水素との適合性の関連があります。
国内では関連の規格作成の動きがありますので、さらに明確になると思われます。
各種流体とゴム材料の適合性は個々の実験が必要ですが、
種類が多いので、この試験が大変な仕事です。
多分、シールメ-カーではこの関連が大きなウエイトを示すかもしれません。
ただし、実際には最近、あまり微々に神経質になる必要があるか、疑問になることがあります。
例えば、10%程度の膨潤が実際の使用する場合、問題にならないと思っています。
各社の技術資料やカタログに記載されている程度の
使用可否程度(流体とゴムとの適合性資料)でも十分に活用できると思っています。
(このあたりには、異議を言われる方が多いかも知れませんが)
なぜかと言いますと、この実験では、流体にゴム材料を全体に浸漬して行うのですが、
実際には使用環境ではシールは圧縮され(つぶされている)て、
一方のみに流体が当たるのが多いので、データより影響は少ないなる点に着目するためです。
ただし、全てではないことは、注意ください。
(続く)
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